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「科学の発見」感想

電弱統一理論ノーベル物理学賞を受賞したスティーヴン・ワインバーグ教授が書いた科学史の本。古代ギリシャからニュートンまでの科学の歩みが書かれていて面白い。

科学の発見

科学の発見

過去を現在の基準で裁定する「不遜な歴史書」とは言っているが、個人的にはそんなに問題だとは思わなかった。確かにホイッグ史観はよろしくないとは思うが、ニュートンの方がアリストテレスより世界を理解していたというのは明らかだろうし。そもそも、この本の目的は過去の偉人たちの間違いを取り上げて彼らを糾弾することではなく、現代の科学の方法論を発見するのがいかに難しかったかを過去と比較して明らかにすることであろう。

また、後ろに付いてくるテクニカルノートが素晴らしい。様々な説や発見の数学的・科学的背景について現代の視点から述べたもので、内容が非常に充実している。

ただ、本の前袖(表紙カバーの内側に折れてる部分)に「化学、生物学などは二等の科学だ」とあるのは非常にダメだと思う。本文のどこを読んでも、こんなことは主張されていない。この言葉を追加した出版社の人間はタコ殴りされても許されるのではないか。

太陽系の解明

この本の山場はいくつかあるが、その1つは太陽系が解明されるまでの一連の流れだろう。

古来から、惑うように運行する惑星の動きは難題だった。

プトレマイオス以前、宇宙の構造を説明する理論としてアリストテレスの同心天球説が存在したが、これは観測と合わない点が多かった。そこで、プトレマイオスは周転円と離心円、エカントという概念を導入した。また、モデルにパラメータを導入し、パラメータの値を観測結果に合わせて決めることで観測結果と概ね一致させることに成功した。このあたりの理屈は理解していないので詳細は省くが、この部分のテクニカルノートは相当詳しくて勉強になる。モデルのパラメータという概念は非常に現代的で、プトレマイオスはすごいと思う。

相当複雑なプトレマイオスの理論は、それでもなお観測結果に合わなかった。これは別に天動説の欠陥というわけではなく、地動説を主張したコペルニクスも同様の問題に悩んだらしい。コペルニクスは太陽を中心とすることでプトレマイオス説の不自然な仮定(ファインチューニング)を排除することには成功したが、観測結果とのズレの問題は解消されなかった。天体の軌道が円である、という前提自体が間違っていたから致し方ない。

いずれにせよ、筆者はプトレマイオスを高く評価している。別に間違っているかは論点ではなく、その研究姿勢が科学的だからだろう。

ティコ・ブラーエは「すべての惑星は太陽の周りを回っているが、その太陽は地球の周りを回っている」という説を唱えた。これは地動説を地球中心で見たのと多分変わらないと思う。彼は精密な観測記録を残した。この時代望遠鏡はなかったから、全て肉眼でということになる。恐ろしや。

ケプラーはティコ・ブラーエの観測データを元に天体の軌道が楕円であると考え、ケプラーの法則を打ち立てた。彼のモデルは非常に単純明快であった。エカントだの離心円だのを導入せずに済むからだ。また、観測データともよく合った。そりゃ正しいんだから当然なんだけど。

ガリレオは望遠鏡による観測で、地動説が有利となる証拠を提示した。最終的にニュートンが運動の法則と万有引力の法則を確立し、その結果天動説は葬られた。たくさんの人々の研究の積み重ねが科学なのだから、これは真に科学の勝利といえるだろう。(唐突)

まとめ

いい本でした。