スロウスタートのキャラ名って苗字の1文字目が数字になってるんですよね。一之瀬花名、十倉栄依子、百地たまて、千石冠、万年大会。
ということは、この法則に従えば新キャラの名前を予測できるということになります。予測してみましょう。
これは東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2023の2日目の記事です。昨日(1日目)はK. 汝水さんによる「明治大学博物館に行ってきました」でした。
日本語の数について
日本語の……というか漢語の数字のラインナップは時代とか国によって結構違います。たとえラインナップが同じでも、それぞれの漢字がどの数字を表しているかは必ずしも一致しません。我々は漢数字を4桁で次に行くものだと思っていますが、場合によっては8桁かもしれないし、それ以外かもしれません。たとえば、現代日本だと億と兆は4桁差ですが(万進)、明の時代の算法書「直指算法統宗」では8桁差(万万進)だったとかなんとか。江戸時代のベストセラー和算書「塵劫記」でも、古い版は万万進(次の漢字まで8桁差)の部分があったそうです*1。
どの数詞が10の何乗を表しているかはさておき、大きな数のラインナップとして現代日本で定着しているのは「塵劫記」の「大数の名」に書かれたものです。これによれば、小さい順に一、十、百、千、万、億、兆、京、垓、𥝱、穣、溝、澗、正、載、極、恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数。見れば分かる通り、上の方はどう見ても仏教用語そのまんまです。
そして、それぞれに対応するキャラは以下のようになります。
- 一之瀬花名
- 十倉栄依子
- 百地たまて
- 千石冠
- 万年大会
- 億果実
- 兆野綴
- 京塚志温
- (垓)
- (𥝱)
- (穣)
- 溝端創
- (澗)
- (正)
- (載)
- (極)
- (恒河沙)
- (阿僧祇)
- (那由他)
- (不可思議)
- (無量大数)
驚くべきでないことに、上の方がたくさん空いています。なるほど予想のしがいがありますね。
実際に予想してみよう
予想してみます。
垓 (がい)
「がい」から始まる苗字とか存在しなくないですか? いきなり詰みかけてます。
いや、キラキラネームならぬキラキラ苗字がダメなんて法律はありません。日本の法律でも帰化すれば創姓のアクエリオンできます。
……「垓亜 夜明」(がいあ よあ)
自分がこんな名前を付けられたらうっかり親を刺してしまうかもしれません。尊属殺人規定が廃止された現代では非常に親殺しがやりやすくて、本当に良い時代になったなあと思います。漸近的社会改良主義も捨てたもんじゃないですね。
次に行きましょう。
𥝱 (じょ)
この漢字は「飛び杼」の「杼」で代用されることもあります。こんな漢字、苗字で使うわけないだろ!
「𥝱楽 佳子」(じょらく かこ)
苗字が漢語っぽいので下の名前も古風にしました。ちなみに「𥝱」は日本生まれの漢字なので漢籍には出てきません。
次に行きましょう。
澗 (かん)
「かん」から始まる苗字はまあ実在しますね。こんな漢字は普通使わないけど。
「澗野 沙奈」(かんの さな)
かわいいですね。あと、とりあえず「野」をつけていれば穏当な感じになるメソッドが確立されてきた気がします。そもそも原作の「兆野」も完全にこれですよね。
次に行きましょう。
正 (せい)
正って漢字から始まる苗字ってだけで苦しいのに「せい」と読む条件まで付けると本当に思いつきません。インターネットを漁りました。
「正条 直美」(せいじょう なおみ)
フィクションにおいて名は体を表しますし、彼女はたぶん法学部に進学すると思います。
次に行きましょう。
載 (さい)
無理。……と思ってたら実在する苗字があるっぽいです。
「載間 灯」(さいま あかり)
かわいいですね。
次に行きましょう。
極 (ごく)
極並(きわなみ)みたいに「きわ」と読む苗字はレアとはいえ実在するっぽいですが、数としての読みは「ごく」なので泣く泣く却下しました。この謎縛りプレイ本当に必要?
「極楽寺 伽耶」(ごくらくじ かや)
どれだけいかつい言葉でも「寺」をつければ全部許されます。奇しくもこっから先ずっと仏教エリアですし。苗字のいかつさと「伽耶」の古風な感じから考えるに、きっと古くから続く名家っぽいところの出身なのでしょう。彼女がスロウスタートに登場することで、物語に一層の広がりが期待できます。
正直、ネタに走ろうと思ったのに背景を想像したくなるようないい感じの名前が誕生してしまって困惑しているのは秘密です。
次に行きましょう。
恒河沙 (ごうがしゃ)
この1単語で既に苗字なんですが……。いや騙されるな、恒河沙が苗字って時点で変すぎる。
「恒河沙 凛音」(ごうがしゃ りんね)
苗字から分かる通り彼女の家は仏教と縁が深く、彼女の名前はもちろん「輪廻転生」に由来しています。彼女自身も名前の響きはそれなりに気に入っているのですが、由来が仏教用語という一点だけは気に入らないようです。スローループの吉永恋さんと同じパターンですね。正直ネタに走ろうと思ったのに2。思ったより可愛いのができちゃいました。
↑かわいい。
次に行きましょう。
阿僧祇 (あそうぎ)
東大生にとって恒河沙はそれなりに聞き馴染みのある言葉だと思いますが(「逆評定」で有名な時代錯誤社の機関誌の名前ですし)、阿僧祇はマジで聞いたことない。
「阿僧祇 雪乃」(あそうぎ ゆきの)
苗字のいかつさと名前のふわふわ感の落差がすごい。ちぐはぐすぎる。「凛音」みたいないい感じの名前ってそう簡単に生えてこないです……
次に行きましょう。
那由他 (なゆた)
一択です。
「那由他 誰何」(なゆた すいか)
別作品が紛れ込んだ……わけではありません。あちらは「多」、こちらは「他」ですので。別人です。別人。
というかこれ冷静に考えると苗字も名前もだいぶ変ですよね。もう違和感忘れちゃいましたけど。ミカンとかも冷静に考えると変すぎる。
次に行きましょう。
不可思議 (ふかしぎ)
そんな苗字あるわけねえだろとかツッコミを入れるのも面倒になってきました。
「不可思議 なゆた」(ふかしぎ なゆた)
もはやネーミングセンスが西尾維新か野﨑まど。いや、思ったより可愛いし野﨑まども西尾維新も両方もっと奇天烈だよな……
どうやってあんな意味不明な人名を毎回生成してるんでしょうね。私は野﨑まどにも西尾維新にもなれません。
↓これのフカシギが数詞の不可思議と掛かっていることに最近気がついた。
無量大数 (むりょうたいすう)
どうしろと?
う〜〜〜〜〜ん。
「無量大 数子」(むりょうだい かずこ)
きっと無料の大盛りを毎回頼んでしまう大食いキャラなのでしょう。実質私。
まとめ
ネーミングに著作権は発生しません。もちろん私が考えた名前は商標登録されていないので商標の問題も発生しません。というかそもそも商標って商標的使用じゃなければ好き勝手使えるんですよ。小説に「LINE」って書いても法には抵触しません。
いや、別に意味はないですけどね。ないですよ。篤見唯子先生〜〜〜〜
追記:本記事の公開後、読者から「百地たまて」「万年大会」の時点で数字としての読みに沿っていないという指摘を受けました。言われてみればその通りすぎる……。だったら「正」も正岡子規とかで良かったね……(良くない)
東京大学きらら同好会 Advent Calendar、明日(3日目)はひろみねさんによる「ボナヴー配信」です。星テレアニメ結局見れなかった