天才クールスレンダー美少女になりたい

チラシの表(なぜなら私はチラシの表にも印刷の上からメモを書くため)

立看考察

立て看板を立てました。


立て看板写真1: 私達の「日常」は、いつもここにある。東京大学きらら同好会







同好会の宣伝のために。駒場キャンパスの、正門すぐの一等地に。


立て看板写真2: 私達の「日常」は、いつもここにある。東京大学きらら同好会









ありがたいことに、この立て看板は概して好評のようです。その反響は、「東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2021」の前日(11日目)の記事、みゃーこ先輩さんによる「きら同立て看かるた体験記」からも窺い知ることができます。また、「立て看板を見て入部した」という新入部員もそこそこ多く、大変ありがたい限りです。

miyako-lolita.hatenablog.com



申し遅れましたが、この記事は「東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2021」の12日目の記事です。

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立て看板の技術的な詳細を知りたい人は、ぜひ東京大学きらら同好会の合同誌「Micare vol.1」を手に取っていただければと思います。私も「まちカドまぞく vs. ウクライナ語警察」という記事を寄稿しています。タイトルの突拍子のなさからは想像もつかないと思いますが、中身は堅実かつ一般的なまちカドまぞく考察記事となっています。ぜひ、まちカドまぞくと一緒に読んでもらえれば幸いです。

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今はちょうど在庫僅少で、ひょっとするともうすぐ在庫切れになるかもしれません。でも、ご安心ください。年末のコミケに合わせて増刷します。年明けには在庫がたくさん復活しているはずです。

実のところ、増刷の部数が非常に多く、印刷費が大変なことになっています。部員一同「こんなに刷って本当に売れるのか……?」と頭を抱えているので、気軽に買ってほしいです。




あをもみじ・UEEU両先生の素晴らしいキャラデザとイラスト、立て看板製作の経験が豊富な部員の技術、その他諸々。
この「きらら同好会」という場が、多様な能力・才能の持ち主たちの協奏の場として成立している——そのことを象徴する、Micareや#FindOurStarsなどの合同誌と並ぶ成果物。それが、この立て看板なのだと思います。



さて、ここまで長々と前置きを連ねてきましたが、実際の立て看板の制作——キャラデザ、下絵作り、看板の組立、塗装など——に関して、先述のMicare vol.1所収の記事に私から付け加えることはありません。

その代わりに私は、この立て看板の表現としての側面について、浅学菲才の身ながら少々掘り下げてみようと思います。


本記事の内容は私個人の意見であり、所属組織の見解を代表するものではありません。



「きららのイデア

この立て看板の特筆すべき特徴は、女の子4人の絵がシルエットになっていることです。にもかかわらず、シルエットだけで「ああ、きららだ」と分かってもらえるような構図でもあります。
事実、看板を見て入部してくれた人からも「ひと目で、尋常でないタテカンだと見抜いたよ」との証言をいただいています。


このようなデザインについて、立て看板の制作を統括したのこ氏の記事では「『きららのイデア』を体現しようとして」という記述がありました。
実は、この「きららのイデア」という概念を初めに提唱したのは私だったりします(サークルDiscordのチャット履歴に抜けがなければ)。



もともと、この概念は表現効果などを狙ったものではありませんでした。表現効果はあくまでも副産物だったのです。




今年の4月に同好会が設立され、その直後に「立て看板を作って宣伝する」という話が持ち上がりました。幸い、この時点で同好会には絵が描ける人も数名おり、いわゆる二次絵を利用した看板も問題なく制作できる状態でした。

そこで、いざ作ろうとしたときに突き当たったのが、著作権の壁です。他の人に著作権がある既存のキャラクターを、無関係の団体が勝手に宣伝に使っていいのでしょうか?



結局のところ、こういった問題は「権利者が二次創作物をどう捉えるか」の一点に集約されます。権利者が黙認すれば事実上問題なし、逆に権利者が黙認できないと考えれば何らかの形でクレームがつけられます。そして、「かなり公共の場に近い大学のキャンパスに、サークル勧誘の宣伝文句と既存キャラを並べた立て看板を作る」というのは、かなり微妙なラインのように思われました。二次創作の同人誌などとはかなり性質が異なりますし、前例もあまりない気がします。黙認はされるかもしれませんが、今後部として同人活動をする可能性があり、そういうときに攻撃される口実を作ってしまう、あるいは権利者に目をつけられてしまうのはあまり嬉しくありません。



そこで、私が提案したのが「どっからどう見てもきららなのに既存キャラと被らない『きららのイデア』を抽出」することでした。私としては、これはかなり苦し紛れで、「そんなの、できれば全部解決だけどそんな上手くキャラデザとイラスト作れないだろ」という気持ちが込められた、かなり投げやりな提案でした。


さらに、議論は進めど結論が出ない中、私がさらに投げやりな気分で「もうオリキャラにきららジャンプさせようぜ( 」と発言。すると別の人から「きららジャンプする女の子のシルエット」という、実際に採用された案が出てきたのでした。

オリキャラという選択

そもそも、なぜ既存キャラを描くことが検討されたかというと、立て看板を見た部員予備軍の人に「きらら」だと認知してくれるのを期待するからにほかなりません。たとえば、ごちうさのキャラを描くことによって、「ココアちゃんとチノちゃん→ごちうさ→きらら」と理解してもらうわけです。この立て看板のターゲットは「きらら」に多少なりとも親しみのある学生たちであり、ごちうさ看板はそういった人に高確率でリーチできるでしょう。



しかし、逆に言えば、きららを知る人たちが見たときに「きらら」だとすぐ分かるのであれば、必ずしも既存の有名キャラに頼る必要はありません。オリキャラを登場させる、つまり同好会で独自にキャラクターを作成して描いてもいいのです。「きららっぽいオリキャラ」というのは言うは易し行うは難しといった具合ではありますが、理論上はそうなります。


さらに、副次的な効果として「きらら」全体のイメージを喚起できるという利点もあります。ごちうさ立て看はごちうさという作品のイメージから離れるのが難しい一方、具体的な個々の作品を飛ばして「きらら」のイメージを喚起できるなら、それは「きらら同好会」のコンセプトにもぴったり適合するでしょう。

キャッチフレーズの選定

立て看板のデザインを考えるにあたって、絵と団体名だけでなくキャッチコピーを入れたいという話が出ました。もっとも、その後すぐに出てきた「私達の『日常』は、いつもここにある。」という案があまりに良すぎたので、そのまま決まってしまいましたが。
他にもいくつか案はあったので、新年度などで立て看板を作り替えるときには別のものに更新されるかもしれません。

このキャッチフレーズは「がっこうぐらし!」の「わたしたちはここにいます」を連想させます。作中世界ほど苛烈でないにしても似たような世情ですから、2021年に掲げるにはぴったりのスローガンといえるのではないでしょうか。
さらに、この時期には「日常」という言葉も大いに話題・議論に上りました。




この立て看板を見たみなさんは、世情とリンクしたこのキャッチフレーズをどのように解釈したのでしょうか。





解釈は、開かれています。





「きらら」概念の具現化

オリキャラの絵だけで「きらら」を伝える——これは確かに理論上可能ではありますが、しかし極めて困難な課題です。そこで、きららを愛する部員の総力を結集し、どういった要素を詰め込めば「きらら」らしさを表現できるか、さまざまな作品を参考にしつつ検討しました。特に、人数やキャラの髪型をどうするかが主な論点でした。


その中でも、「きららジャンプ」の採用はすんなり決まりました。これを封じて「きらら」らしさを表現するのはあまりにも難しいですし、見た人の「きらら」のイメージを喚起するには最も適切な要素だといえるでしょう。



立て看板にするだけなら性格などを設定する必要はありません。しかし、この子たちには同好会のオリジナルキャラクターとして随所で活躍してもらう予定だったので、「きらら」らしさに配慮しつつ、物語なども作れるように細かい設定を詰めました。実際に、立て看板に描かれた4人は前述の「Micare vol.1」収録作の「みかーれ!」に既に登場しています。

また、これは裏話ですが、キャラクターはそれぞれ東京大学教養学部(前期課程)の科類(理科一類〜三類、文科一類〜三類)をイメージして設定してあります。モデルとなった人物もいるので、気になったら考えてみてください。


シルエットという妙技

もともとの著作権問題の回避という目的からすれば、シルエットに必然性はありません。オリジナルのキャラクターを作った時点で、問題は全て解決されています。

しかし、シルエットを採用したことが、この立て看板をより印象深いものにしている——そのことに疑いの余地はありません。






まず、シルエットは一般的な絵に比べて情報量が圧倒的に少ないという特徴があります。それでいて、髪型やキャラの体勢のような要素は保持されています。その結果、全体に占める「きらら」要素の濃度は格段に上がります。「きらら同好会」の文字を読んでもらうよりも先に「きらら」だと気付いてもらうのが理想ですから、伝えたい情報を凝縮するのは理に適っていると言えるのではないでしょうか。


さらに、情報量が少ないシルエットは見る人の想像力をかき立て、強い印象を残します。

このような手法は別に珍しいものではなく、たとえば2000年代にAppleが展開したiPodのシルエットCMがいい例です。



「情報量を減らすことで、見た人の想像力の助けを借り、より多くを伝える」——
いわゆる「萌え絵」がオタク業界の文脈を抜け出し、広告から参考書の表紙まで幅広く使われるようになった2021年。その中にあって、あえてキャラの輪郭のみを描くという手法を取る意味が、その逆説にあります。



とにかく、これほどの素晴らしいデザインを作り上げたイラストレータ・デザイナーのみなさまには頭が上がりません。シルエットなのに、申し分なくかわいいのですから。
改めて立て看板を眺めてみて、その思いがより強くなりました。 #FindOurStarsやMicareでもさんざんお世話になっていますし。わたし、何もあげられるもの無いから文章を書くよ!








あと、いわゆる「萌え絵」に抵抗のある人の反発を受けにくいという効果はあるかもしれません。もっとも、老舗百貨店の三越すら「艦これ」とコラボしているこのご時世に——もちろん、コラボは伝統ある三越のブランドイメージを損わないよう非常に慎重に展開されているわけですが——、立て看板ごときで「萌え絵」そのものを自主規制する必要があるかというと、微妙なところです。団体の名を背負うのでもちろん品位や配慮は必要ですが。匿名立て看だと文章だけでも品のないものはたくさんあります だからといってダメだと言うつもりはないですけど


荒野に咲く一輪の花

前期(Sセメスター)と夏休みが終わり9月になると、春にあれほど咲き乱れていたサークル宣伝看板たちの多くは沈黙します。侘び寂びの秋です。
その結果、立て看板特区・正門ロータリーの立て看板は社会的・政治的な主張を掲げるものが大半となります。天高くツイ燃ゆる秋、様々な意見の人がTwitterとリアルの双方でバチバチにやりあっており、その様子はさながら西部劇に出てくる荒野のようです。


荒れ野は荒れ野で趣がありますが、そこに咲く一輪の花にもまた別の趣があるのではないでしょうか。私はそう思っています。









もっとも、先述の通り、きらら同好会の立て看板が何も主張していないかというと、必ずしもそうではありませんが。

「美しい薔薇には棘がある」——昔からそう言うでしょう?

東京大学きらら同好会の立て看板
それでも、わたしたちは——








東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2021」の明日(13日目)の記事は、れんず(a.k.a. すばる)先生による「ぎんしお少々は極めて優れています」です。

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