この学校ヤバイですよ。なんで生徒がバンバン物理トリック考えて不可能事件起こすんですか。
総評
全体的に良い。シリーズでも一二を争うオススメ作品。
「放課後探偵団」でも感じたけど、この作者が考える不可能事件の難易度はかなり高いです。(少なくとも私にとっては)
物理トリック大好き人間は是非読みましょう。いやあんなん分かるわけないやろ。
巻を跨ぐ伏線の回収などきれいにまとまったので最終巻みたいな雰囲気は感じるけど、ちゃんと次巻もあるので安心しましょう。
解決されないホラー展開もあるし、3つの事件の動機が全て「割り切れない感情を抱えていたらトリックが天から降ってきたので魔が差した」なのは偶然以上の何かを感じるし、ホラーミステリとしても良作だと思います。ホラー要素があっても事件がミステリとしてちゃんと解決されるので文句なしのミステリです。
あと伊神さんが人外扱いされてたのには笑った。
口裂け女事件
「あー」って感じだった。何よりも動機が上手い。「よくできている」以外の感想がないです。
不可能事件のトリックを考えるだけならともかく、動機を作るのって難しいと思うんですよ。殺人事件なら「迷宮入りさせたい」みたいな動機で片付けられるかもしれないけど、こういう悪戯だと「ふざけたかった」「なんとなく」で片付けるのはちょっと強引な感じがしますよね。推理クイズ寄りの推理小説ならそれでもいいかもしれませんが。
花子さん事件
まあ、真相にそんな意外性はないいです。というより、この話は動機の意外性とそれに伴う葉山くんの告白がメインですね。あと犯人の独白があっさり味。
カシマレイコ事件
これも動機が上手い。
七不思議の謎
納得のタイトル&伏線回収だった。1巻「理由あって冬に出る」最後の伏線がここで回収されるのかあ……という気持ちです。英題の"RELEASE MY SCHOOL DAYS"ってそういうことか。意図を踏まえて意訳すると「私の学校生活を解き放て」とかそんな感じ?
過去の事件を推理する部分も、十分な蓋然性があると思う。そもそも情報が少ないから牽強付会的な推理に陥りそうなものだが、そこらへん作者が上手いですね。
こっからネタバレ注意。まあトリックのネタバレはしませんけど、事件の内容を書いたり私の考えた別解の可能性を示したりするので。
カシマレイコ事件
最近、ミステリの「読者への挑戦」が解けるようになってきました。つまり、ハウダニットが解けるようになりました。
まあ原因は明らかで、ミステリのトリックを作ろうと四六時中考えていれば推理もできるようになるってわけです。
で、これはすごく不可能犯罪みが強かったので(犯罪ではないが)、ちょっと考えてみました。まあ真相にはたどり着けませんでしたが。私もまだまだ精進が足りないようです。
でもさ、これ……青砥さんと一緒に鍵を掛けたとか青砥さんが鍵を返したとは書いてたけど、青砥さんが事務の職員さんに鍵を返してるところを見たとは書いてないよね。つまり、青砥さんが返したと見せかけて鍵を隠し持ってて、仕掛けをセッティングして、何食わぬ顔で返す……ということも可能なはず。
ノートが証拠である以上、真相は伊神さんの提示したやつしかありえないわけだけど、そういう疑いが当の放送委員たちから出なかったのって極めて不自然じゃないですか?
うーん……やっぱり放送委員は鍵を返すとこちゃんと見てたんですかね?「じゃあ鍵返しておいて」って言って事務室の入り口か校門で待ってるのが普通というか自然な気がしなくはないです。