天才クールスレンダー美少女になりたい

チラシの表(なぜなら私はチラシの表にも印刷の上からメモを書くため)

COMITIA139参加記: 人生初のサークル参加でやったこと全記録

完売への道

家で、学校で
机に向かい、パソコンに向かい、スケッチブックに向かっていたが
俺たちは気付かず、思ってもみなかった
心の底では俺たちは既に同人作家だったのだと

原稿はどこでも行われ
家で、そして会場でも
いかなる困難においても君には仲間の誠実な手助けがある
もし君の運が良ければ、道が君を連れて行ってくれるさ
我等のコミケの壁サーへと!



www.youtube.com






はい。


要約

2月20日、COMITIA139にサークル「ナヴァストーケ」で参加してきた。合同誌に寄稿したことはあっても、自分でサークル参加したのは初めて。50部刷って、なんか3時間で完売した。イベント後の反響もかなりデカかった。


マジ?





今、電子版がありえん売れてる高揚感と大日本帝国ロードをひた走るプーチンの茶番と長ったらしい中身のない恨み節を合計2.5時間くらいロシア語で聞き続けたことによる徒労感で頭がおかしくなりそうになりながらこれを書いている。というかこんな長くて分かりづらい1文を書くなんてマジで疲れてるな。


電子版はこちら。

navostoke.booth.pm





同人活動のスタンス

一応、自分なりに指針みたいなのは策定してある。

  • 利益は二の次、しかし利益を罪悪視しない。利益が出れば次の活動の負担が減るし、単純な話だが多くの人に読んでもらえるのは嬉しい。
  • 何よりもまず、いい本を書く。
  • いい本を書いた上で、それを届ける努力を可能な限り怠らない。いいものでも勝手には売れない。

発端

だいぶ前から、自分の本を出したい欲求はあった。それこそ、高校生の頃から。そして、2021年もは東京大学きらら同好会の部員として、合同誌に寄稿するなどの活動をした。

そういう経緯はもう話したので、省略。

yuyusuki.hatenablog.com



そろそろコミケという時期になり、「そろそろ同人やろうかな、個人で」という気持ちになってきた。知り合いのオタクも何人か2月のコミティアにサークル参加するっぽいし、このビッグウエーブに乗らない手はないな?

というわけで、勢いでサークル参加を決めましたとさ。

で、何書くよ?

とりあえず、私の原点は評論・情報だ。高校の頃から評論島のサークルを1つずつ巡って買い漁ってた程度には思い入れがあるし、いつかは評論情報でサークル参加して評論島魂を見せてやろうという気持ちがあった。なんなら、きらら同好会でも割とそこに近いジャンルの文章を書いている。もちろん小説も書くけれど。

そういうわけで、評論・情報ジャンルで申し込んだ。



ところで、だいぶ前から「オタク作品のロシア語に突っ込みを入れる」みたいなコンセプトの同人誌シリーズを構想していた。タイトルも「ロシア語警察24時」がいいなと思っていた。これはちょうど1年くらい前、きらら同好会に入る以前のこと。

このアイデアは8ヶ月くらい塩漬けにされていたのだが、初めの一歩としてこいつの第一巻を書くことにした。具体的な内容は迷ったが、1巻は間口を広くするためにテーマを「人名」に決定。あまりに「そのロシア人キャラの名前、おかしいだろ」という案件が多いものだから、こいつをネタにしようという魂胆だ。


そういう人名に「それ、変だぞ」とツッコむのも楽しいが、まあ当然「じゃあどうすりゃいいんだよ」と返ってくることもあるだろう。仮に、創作者が正しい名前をつけたいと思いつつ知識不足でできないのだとしたら、私としても手助けを惜しむつもりは一切ない。つまり、ロシア語を分からない人でも正しくロシア人キャラを命名できるような解説を付ければいい。言うは易く行うは難しではあるが、ともかく基本方針はまとまった。


ちなみに、「人名エトセトラ」というサブタイトルはマジで適当に考えた。雰囲気優先。どうせ集客その他には大して影響ないし。

サークルカット作成

初期案はデザインの最低限の基本「近接、整列、強弱、反復」すらまともに理解していないカスのデザインで、マジでカスだった。4ヶ月前の自分のデザイン能力の欠如、ヤバすぎ。

サークルカット 初期案

オタクに添削をもらい、やや改善したのがこっち。

最終的なサークルカット

重要な情報を強調する、同じグループのものは近付ける、異なるグループのものは離す。まあ、だいぶマシになったと思う。

執筆

私だってね、まあロシア語にはそこそこ自信があるので。

読むだけなら機械翻訳でも不可能ではないが、情報を探す段階だと大変だと思う。一方、私は呼吸のように——少なくとも英語とおよそ同レベルには——ロシア語を読めるし、ロシア語で迅速に情報を探索・精査できるわけで。一応、これでもソ連史研究者の卵の卵なので。

たとえば、名(イーミャ)とか愛称は特に、辞書引いただけだと「実際に使われている形なのか」「どれくらいポピュラーなのか」あたりがイマイチ分からない。そのあたりを調べるためにロシア語調査スキルが大活躍した。


……いやさすがにちょっとイキりと誇張が過ぎるな? 普通にまだまだ勉強するべきことは山ほどあるし語彙も足りないし読む速度も全然足りてない。
いいいいイキってすみません……


まあ、ロシア語の文法知識や読解能力で私より上の人はそこそこいる。いるけど、残念ながら誰もこんな本は書いてくれない。だったら事実上私がオンリーワンだし、ナンバーワンだ。

……これ、「まちカドまぞく vs. ウクライナ語警察」のときも言った気がするな。私よりウクライナ語ができる人は当然そこそこいるけど、まちカドまぞくとの積集合にはほぼ私しかいなかった。



というわけで、ロシア語オタクの全力を出して執筆した。初心者向けゆるふわ同人誌も嫌いではないが——たとえばひづき夜宵先生の艦これ×ロシア同人誌は大好きだ——、私が書くからには初級者から上級者まで知見が得られるスルメ本にしたい。しかも、それでいてロシア語を知らない人を置き去りにしたくはない。



こういった目論みが成功したかは、読者のみなさんに審判を仰ぐことになるだろう。少なくとも、自分の気持ちとしては、そこそこ上手くいったと自負している。

表紙デザイン

地獄の作業、はっじまっるよ〜〜

地獄なのがあまりに容易に予見可能だったから、11月上旬くらいから手をつけていた。締切は2月。不慣れな作業は早めにやっておくに限る。



いろいろ試してみて思ったのだが、そもそも、使える要素が少なすぎる。タイトル、サブタイトル、記事の煽り文……。となると雑誌みたいなレイアウトを考えたくなるが、背景の写真がないからマジでスッカスカになる。絵も一切描けないから載せられないし。素人には荷が重すぎる。


もうね、絵や写真がデザインにおいてどれくらいありがたい存在なのか、めちゃくちゃ思い知った。しかしまあ、出せる手札でなんとか勝負するしかない。





いろいろ考えたけど、さすがに文字だけだとスッカスカになって困る。そこで、人名がテーマだから行政とかの書類を模することを考えた。書類の絵もどきを適当に作ると、まあいい感じにスペースが埋まって見栄えもそれなりになるのでは?

というわけで、「キャラクター創造届」なるブツを捏造した。姓、名・父称、年齢、職業、生誕地、住んでいる街、外見、などなど。いわばキャラシートだ。全部ロシア語だけど。ちなみに、キャラシート部分にこっそり今後の活動の伏線を仕込んである。乞うご期待。手書き部分のロシア語フォントはCaveatを使った。



結局、できたのはこんな感じだった。

「ロシア語警察24時 vol. 1 人名エトセトラ」表紙

FFのデザイン有識者に「よくできてる」と褒められた。マジで? あのデザイン破綻サクカ作ってた人間が?


よく見てもらえれば分かるが、マジでパワポで作れるレベルの表現しか使ってない。図形、文字、色、フォントのウェイト、配置。まあ、パワポじゃなくてInkscapeを使ったけど。


個人的なお気に入りポイントはタイトルを2行にして生まれた「24時」の右の空きスペースにサブタイトルを入れてるとこ。1行だとちょっと小さくなりすぎるし、しかし2行だと空きスペースが気になってしまうので。


こういうのは情報の優先順位と視線の順番を意識するのが大事……だと思う。デザイン無識者だから分からんけど。今回はまあ、「ロシア語警察24時」というキャッチーなタイトルが一番、その次が記事の宣伝文句なので、その通りに配置や強調をいじっている。

もちろん実際の会場ではポスターとかポップとかで内容を伝えたり通行人の意識を掴んだりもできるけど、表紙でやれるならやるに越したことはないので。



ちなみに、裏表紙は適当にロシア語で作った。一番時間かかったのは「ロシア語警察24時」のロシア語訳を考える段階。意訳に意訳を重ね、結局「同人サークル『ナヴァストーケ』のサミズダート刊行物 オタク警察ロシア語部門 第1巻 ロシアの人名」みたいになった。サミズダートというのはロシアにおける自主出版のことで、検閲を避けるために行われていた。もちろん同人誌は検閲避けではないけど、ちょっと仰々しいソ連っぽい言い回しはみんな好きでしょ?

裏表紙

部数決定


これが本当に困る。売り切れは欲しい人に行き渡らなかったということなので嬉しくないが、しかしあまり多く余りすぎても悲しくなる。

とりあえず、部数に影響のありそうなファクターを並べてみるか。


フォロワーが6300人。
普段は感覚が麻痺してるけど、これはけっこうな数だ。しかし、たとえば絵師とは違い、フォロワーは必ずしも同人活動のファンではない(絵師は絵師でフォロワー数と同人誌の需要のギャップに苦しんでそうだけど)。ただ、私という多趣味なオタクの生き様に多少なりとも興味を持ってくれている層ではあるはずで、だとしたらフォロワーのけっこうな割合にこの本は刺さるんじゃないかという気もする。分からん。

コミティア
そう、出るのはコミティアである。コミケではない。オンリーのような伸びも見込めない(評論・情報のオンリーってなんだよという話だが、おもしろ同人誌バザールとか?)。だいたい、コミティアで評論情報が売れるなんて話は寡聞にして知らない。



う〜〜〜〜〜〜〜〜ん。かなり強気で50部! w


これはネタバレかつ後知恵ですが、通販考慮するとたぶん最低でも80部か90部くらいは刷っとくべきだった。いやその決断は初回じゃできへんって。

価格設定

50部で印刷費が1.3万くらいだったので、ちょっと余裕を持ってキリ良く500円に。半分で印刷費とトントン、完売で利益が1万ちょい。

ISDN申請

ISDNはISBN(国際標準図書番号)のパロディ、「国際標準同人誌番号」のこと。バーコードとか発行してくれて、本の見た感じがかなりそれっぽくなる。データベースにも登録されるし、発行しといて損はない。あとイベント当日に中の人が買いに来てくれるかも

isdn.jp

金銭的な収入はありませんが、運営しているとすべての登録情報が手元に届きます。すると今まで知り得なかった同人誌との出会いがあります。これはなにものにも代えがたい報酬だと思います。

いい話。

入稿

印刷所はポプルスさんを利用した。

www2.popls.co.jp

ポプルスにした理由はいくつかある。

まずは単純に料金。28ページで30部とか50部あたりの価格をいろいろ調べたところ、だいたいの印刷所の早割よりもポプルスの通常入稿料金の方が安かった。正直ビビった。

次に、オプションが少ない。私に装丁にこだわるほどの余裕はないし、入稿作業で「大量の紙から種類を選んで〜オプションを選んで〜」みたいなのは本当にやりたくない。その点、ポプルスは必要十分なオプションを揃えつつ、適切なセットを選んでおけばデフォルトでもよしなにやってくれる。締切間際のビギナー同人作家には本当にありがたい仕様だ。


日曜日の0時過ぎ(日が変わった直後)に入稿したのだが、日曜日と月曜日は定休日なので受付は火曜日になった。火曜日がデッドラインなのでやや心配だったが、まあ大丈夫だったよね。搬入は直接搬入。宅配その他と送料が変わらないので実質無料。


告知1

表紙をそのままツイートしたら軽くバズった。ウケるね。まあ、デザインというよりは「ロシア語警察24時」ってフレーズのパワーだと思うけど。自分コピーライティングとか割と得意かもしれん(ほんまか?)

デザインはキャッチコピーを強調する役割を果たしてくれたと思われる。まあ目論み通りではあるが。

告知2: おしながき

さて、本番の告知、つまりおしながきを作らなければ。


Twitterに投稿するのだから、画像の縦横の比率が大事になってくる。今回は縦4:横3の縦長画像を採用した。これだとスマホでもパソコンでも切れずに表示される。

例のごとく、視線の順番と情報の優先順位を考える。強調の方法を「太字」「色変え」「白文字 in 色付き図形」しか知らない人間なので。

おしながき

こっちも地味に伸びた。宣伝がてら執拗にRTしたら最終的に初回の告知より伸びた。




訂正用紙

デザインとか気にせず適当に作った。ミスったページに直接挟む予定だったのでページ数を入れ忘れていたが、ページ数はあった方がよかったね……。

正誤表

A3(コンビニで白黒プリントが1枚10円になる最大サイズ)に9枚詰め込んで、それを6枚刷った。そしてはさみで9分割。せめてカッターナイフ使うべきだったね……。

ダウンロードカード

スペースの都合で省いたけど、冷静に考えたら「ダウンロードカード」ってちゃんと書いた方が良かったな……。(反省)

カスのダウンロードカード

A4に9枚分詰めて6枚印刷することに。

キンコーズで印刷したのだが、名刺の紙に印刷するにはキンコーズのパソコンから出力するしかなかった上、そのパソコンがUSBメモリを認識してくれなくてマジで困った。データをGoogleドライブに上げてなかったらマジでお金払い損だった……。(Googleドライブで共有リンク作って自分のTwitterアカウントのURL欄をメモ帳として利用しURLをパソコンに受け渡した)

こっちも家に帰ってからはさみで切ったのだが、せめてカッターを(略)



次ダウンロードカード刷るとき、本当にどうしようかなあ……。ダウンロードカードの印刷費も安いわけではないが、それ以上に切るのが本当に面倒。

設営の計画

Twitterでの告知はそこそこうまくいった。あれを見た人の何%かは知らないが、一定数は買ってくれるような気がする。というかそうであってほしい。FF外の人にもけっこうRTされたから、FF外の私に興味がない人たちにも多少は面白そうと思ってもらえてるはず。

FF外の人の一定数に面白いと思ってもらえているのなら、会場で通りがかった初見の人も一定割合で釣れるはずだ。そのために重要なのが、当日の設営である。


布が必要なのと、とにかく立てて置くことで人目に付きやすくするのと、あとはポスターみたいなのがあればなお良し。残念ながらポスターまで手が回らず印刷やポスタースタンドの準備がつかないので、とりあえずやや大きめのポップを印刷して代替することにした。クリアファイルに30cm定規と一緒に入れてブックスタンドに立てかけると自立してくれる。(めちゃくちゃ貧乏くさい光景である)

ミニポスターもどき

順番は前後するが、通りがかりの人を釣るためのPOPをコンビニで紙にカラー印刷した。A4サイズ。

POP(ポスター型)

とにかく言葉のインパクトで釣る作戦。素人コピーライターとして興味持ってもらえそうな言葉をいろいろ考え、結局「そのロシア人キャラの名前、ヘンじゃないですか?」になった。あとはまあ「ロシア語警察24時」って文字列自体もけっこうインパクトあるし。

設営道具の買い出し

池袋のセリアで諸々の物品を購入。本などを立てかけられるワイヤースタンド、B5用のブックカバー、コインケース、などなど。なお、コイントレイだけは全然売ってなかった。次にDAISOにも行ったのに、まだ発見できず。結局キャンドゥで購入。


と思ってたら「布」を買い忘れた。バカ。


というわけで翌日にユザワヤへ。諸事情で近所の池袋ではなく京王新宿店。オタクと新大久保でビリヤニ食べる用事があってね……。

2m x 2mの赤色シーチング生地が量り売り生地より安かったので、そのまま買ってきた。ちょっと大きいけど、折り畳んで使えばまあ。そのうち適切な大きさに裁断してもいいし。







当日の設営

スペースに到着するとテーブルの下に段ボール入りの本が来てて、さすがに気分が高揚します。(CV: 井口裕香)

正誤表を1冊に1枚ずつ挟んだ。仲のいいオタク(サークル参加)が応援に来てくれて地味にありがたかった。あと、設営した。Twitterで知り合った人やオタクが挨拶に来てくれたので、新刊交換などをした。


設営後の写真はこんな感じ。

ブースの設営の様子

ただ、この写真の向きから見て左がすぐ通路で——お誕生日席に配置されてしまった原因は間違いなく「社会主義グルメ」で有名な隣のプロイェクト・オストさんである——、おまけにプロイェクト・オストさんが欠席なので通路からスペースが見えやすい位置だった。というわけで、途中で左右をチェンジしポスターもどきを左端(私から見て右)に置くことにした。通路の人によく見えた方が嬉しいので。効果があったかは知らないけど。

イベント本番

人通りも売れ行きも、それなりに波がある。まあ、そんなもんだろう。



で、3時間で完売した。なんで????

1時間ごとの頒布冊数は、記録に残っている限りでは18、16、13だった。全部記録できたわけじゃないけど(4冊足りない)、まあ目安にはなるはずだ。


売れ行きは大事だが、それよりも大事なのはイベントの来場者層、スペースに来てくれる人の層、手に取ってくれた人の割合、手に取ってくれた人のうち買ってくれた人の割合などではないか。こういった情報は次に活かせる自分だけのデータのはずである。


Twitterで予め知っていて買うつもりで来てくれる人が、本当にありがたいことにかなり多かった。そういう人はだいたいスペースに来てすぐ買ってくれたり、あるいは見本誌を見るにしてもそれまでの動きが淀みなかったりする。表紙とかポスターを見て「おっ」としばらく立ち止まるような動きがない。

一方、表紙やポスターを見てスペースに寄ってきてくれた人の数は、スペースに視線を向けてくれる人の数から考えると、高くはないとはいえ十分な割合だったと思う。即売会は「客も本を探す意思がある」という性質上、かなり打率が高くなりやすいのだろう。集客を意識して設営したのが奏功したのであればいいのだが。

で、いざスペースに来てくれた人のうち、購入してくれた人の割合は……嬉しいことに、そこそこ高かった。つまり、表紙やポスターから得られる「期待」とマッチする中身を提供できていたと結論付けてよさそう。これは逆に「中身に合った期待を持たせるような表紙・ポスターだった」ということでもある。けっこうやるやん、自分。


もっとも、コミティアというイベントは、そもそも評論情報の本がたくさん売れるようなところではない。今回はTwitterのバズと知り合い効果で60部くらい売れそうな勢いだったが、もし私がTwitterをやっていなければ20部売れたかすら怪しい。




それと、電子版のダウンロードカードについて。
これはもともと技術系同人誌の世界の文化で、評論島で似た取り組みをしているサークルはさほど多くない。カードを印刷するのもタダではないのだが、私は次回以降も続けるつもりだ。ほとんどの人は使わないかもしれないが、何人かの人が「電子版、助かる」と言ってくれたので。ただ、刷って裁断するのが大変なのはどうにかしたい。なんかいい発注先ないかな。





おそらく初見とおぼしき参加者さんに買ってもらえたり、買ってもらえなくても面白いと言ってもらえたり、とにかく好評で嬉しかった。キャラ名ツッコミの章で立ち読みしてくれた人が笑ってくれたときなんて、もう本当にとんでもなく嬉しかった。みなさんの笑顔が私を救ってくれている。

私が評論情報系同人誌を愛し評論島を我が家のように思っている理由は、ひとえに「存在することすら予期できないような突拍子もない、しかも面白い本がたくさん埋まっているから」だ。それだけの理由でここ5年、ずっとこのジャンルで読み専をやってきた。私が今度はこういう「わけわからん面白さ」を少しでも伝える側になれたのなら、ただ本望の一言に尽きる。
願わくは、評論情報の沼にハマる人が1人でも増えてくれますように。そして、その人たちが、いつか自分だけの面白さを書いて届けてくれたら、それはどんなに素晴らしいことだろうか——



完売後

仕方がないので、完売報告をした。このとき電子版のURL(あらかじめ用意してあった)を添えたのだが、スマホでURLコピペが面倒とはいえ、やってよかった。電子版を先に用意していたのは本当にファインプレーだったし。

後日談

なぜかバズった。


速水螺旋人先生にまで届いてしまった。あと、弊学でロシア文学の研究をやってる鳥山祐介先生にRTされて震えた。

弊学のロシア語教員にRTされた回(ガクブル)


本当にヤバくて、ヤバい。



で、みなさんが宣伝してくれたりバズったりしたおかげで、電子版がマジで飛ぶように売れた。「300円ならまあちょっくら買ってみるか」みたいな人がけっこういたのかな? boost含めて売上が2.5万円に届きそうな勢い。電子版は原価0だから100%利益になるわけで、さすがに目を疑った。


こんなの、技術書典の参加記でしか見たことがない。正直、夢なんじゃないかとちょっと思ってる。
まあ、利益が出ると今後の活動が費用面でだいぶ楽になるので、一度限りの夢だとしてもありがたいことに変わりはない。


なんというか、バズは水物だから、電子版との相性がいい。評論・情報というジャンルも電子版との相性がいいし、今後も電子版は続ける所存だ。私には狙ってバズらせるなんて無理だけど、偶発的なフィーバーを想定して準備しておくのはいいことだ。

今後の活動に関する悩み

こんだけ初回で大成功しておいて、悩みなんてなんと贅沢な!

……いや、分かるよ。分かるけど、初回で大成功してしまったが故の恐怖というのがね、ある。
今回みたいに、また完売させて楽しみにしてた人を悲しませてしまうかもしれない。一方で、それを回避するために強気で刷ったのに在庫が大量に余ってしまったら、それはそれで嬉しくない。
20部とか30部とかをちまちま売るサークルの方が、「中堅と言うには危うく、零細と言うには規模が大きすぎる」中途半端なサークルよりは気楽だ。こんなことを言うと袋叩きにされそうだが。




実のところ、東京大学きらら同好会で初めて合同誌を出したときも、同じような状況だった。超強気で刷ったはずの合同誌が1回の即売会で消えてしまい、いつ何部増刷するかで胃がかなり痛んだのを覚えている。結局、超超超強気で刷ったけど。
我らが東大きら同も「中堅と言うには危うく、零細と言うには規模が大きすぎる」サークルの好例といえる。

で、8ヶ月を経て今度は私個人が同じ立場になってしまった。1人サークルだから、金銭的負担も在庫を保管する物理的コストも、何人かで分け合えるサークルに比べて確実に重い。


そして、贅沢な悩みだが「電子版が70部くらい売れてしまっている」という状況もある。もちろん、電子版を売っていなければこの層は完全にゼロになっていて、莫大な機会損失が発生していただろう。そこは一切後悔していない。

ただ、この中で「電子版がなければ紙の本を再販まで待って購入してくれたはずの人」がどれくらいいるのか、それが分からない。そもそもの需要が分からないという大問題に比べれば大したことはないかもしれないが……。



たぶん、再販は4月になる。帰省している間は発送ができないので、戻ってきてからだろう。何部刷るのかは、正直分からない。通販でフォロワーに届けつつ、コミケで売り尽くしセール……という段取りになると思うのだが、さて何部売れることやら。




それに、新刊のこともある。

ロシア語警察vol.2なのか他の本なのかは分からないが、出すに決まっている。決まってるんだけど、今回と同じくらい面白いものを出せる気がしないんだよね……。バズりやすさという点では今回のネタが異常にハネやすかっただけなのだが、単純な面白さでも、どうかなあ……という気持ち。


まあ、これは私が悩むこと。悩んだおかげでいい本ができるなら、私なんていくらでも苦しんだっていい。

次回への反省点、あるいは今回の良かった点

  • もっと刷れ。最悪余ったとしても、床に障害物が散らばって通行に支障が出るレベルの弊汚部屋じゃ100部ごときの同人誌なんてホコリみたいなもんだ。
  • 印刷は本文モノクロである限りポプルスさんにまたお願いしたい。実は「マット加工の手触りがいい」という感想も来てる。
  • ダウンロードカードは継続。ただ印刷方法は要検討。
  • 電子版はあらゆる観点からして用意しておくべき。
  • 次はポスターとポスタースタンドも用意すること。ポプルスさんなら1枚無料で印刷できるんだし、「余裕がなかった」以外でやらない理由がない。
  • 設営のレイアウトの大枠はしばらく現行のままで。扱う本が増えてから再考する。
  • もっと余裕を持って入稿する。十分な校閲を行う。50部だからまだ良かったが、100部単位の正誤表を1枚ずつ本に挟む作業なんて絶対にやりたくない。
  • 他のイベントに関しても、今回コミティアで行ったような客層の分析をすること。特に、コミケと「おもしろ同人誌バザール」に関しては。彼を知り己を知れば百戦殆うからず。

感想箱

実は、本の最後のページに「読了報告フォーム」なるものをつけていた。これはさっき思い出したのだが、何か来てるかもと思い、フォームを開いてみた。


来ていた。それも6通も。



「この本のために即売会に初めて参加した」という人すらいた。なんというか、本当に物書き冥利に尽きる。即売会という魅惑の世界に突き落とす飛び込む手引きができたなんて、こんなに光栄なことはない。

そして、自分の狙い——「ロシア語初心者〜中級者が知識の整理に使えるように」「ロシア語の知識がなくても面白く読めるように」「詳しい人が読んでも新たな発見があるように」「エレクトリーチカ・サプサンさんの項では笑ってもらおう」など——がちゃんと達成されていると分かったのが、励みにも自信にもなった。

でも表紙褒められたのは予想外だったな。正直デザインは苦手だけど、苦手なりに戦う「カスのデザイン」のノウハウはちょっと分かってきたかもしれない。




あ、ロゴを褒めてくださった人もいた。いやほんまええんよ、このロゴ。「めちゃくちゃロゴ褒められてるよ〜」ってデザイナー様に伝えておきました。


おわりに

今、かなり感極まっている。同人をやっていなければ絶対に得られなかった感想、私だけの感想。そんなものが得られるなんて、つい1年前までは思ったことすらなかった。


せっかくなので、私が好きなweb小説でこの記事を締めくくらせてほしい。同人活動の楽しみと苦しみについての話だ。


「フラットリリーはきらめかない -オタクな二人と同人誌-」

kakuyomu.jp





どうでもいいけど隣のアネクドート漫画のサークルに来てたロシア人オタク2人組がこっちに来てくれなかったのがけっこう悲しい。まあ、その人たちが求めているものとマッチしなかっただけなんだけど。