天才クールスレンダー美少女になりたい

チラシの表(なぜなら私はチラシの表にも印刷の上からメモを書くため)

【全文公開】終わりに魅せられて【唯だ、君と紡ぐ】

サークル「Rosen church」の紡ぐ乙女と大正の月合同誌『唯だ、君と紡ぐ』(コミックマーケット103発行)に文章を寄稿しました。タイトルに「唯」と「紡」が入っててお洒落すぎる。カプ厨が考えた題名? (まあそもそも公式が最大手カプ厨なんですけど)

唯だ、君と紡ぐ/紡ぐ乙女と大正の月非公式アンソロジーブック(Rosen church) | メロンブックス

評論とエッセイとレビューを足して3で割った感じの文章で、3000字と短いものの割と上手く書けた気がします。以前のつむつきオススメ記事やまぞくアンソロのレビュー記事(『ブラインド vol.1』寄稿)もそうですが、私はこういう短評っぽいのが一番得意なのかもしれません。長めの論考をもっと上手く書けるようになりたい今日この頃。(というか書けるようにならないと人文系院生失格である)

yuyusuki.hatenablog.com

blin-d-s.booth.pm


書いたのが完結直前の最後のクライマックスに差し掛かった時期だったので、3巻までは読んでいる前提ですが、結末部分のネタバレはありません。

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【つむつき】東大医学部入試(1921) ドイツ語 解答・解説

これは東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2023の10日目の記事です。


昨日の記事は、ひろみね氏による「妄アカクイズ」でした。

adventar.org




東大きらら同好会が2022年に発行した合同誌「Micare vol.2」には、「きららの中の東大」と題した記事が載っていました。最近きらら同好会のブログに再録されたので、そちらで読んだという人もいるかもしれません。

utkiraracircle.hatenablog.com

この中に、「紡ぐ乙女と大正の月」2巻に登場した「とびきり難しい」帝国大学の入試について書かれた部分があります。当時出題された実際の問題の解説にまで踏み込んでいて面白いのですが、ドイツ語の問題だけはDeepLで殴っているので解説がありません。

私は一応この本の校閲責任者だったので、合同誌の発行前に上の記事の内容も確認しています。そして当時も「ドイツ語の部分の解説が欲しいなあ、ちょっとだけでもいいから」と思っていたのですが、私自身にドイツ語の知識が一切なく、何もできなかった記憶があります。当時からずっとそれが心残りでした。


しかし、今の私は一味違います。「Micare vol.2」の発行から1年以上経って、ずいぶん成長しました。具体的には、ドイツ語が読めるようになりました。

yuyusuki.hatenablog.com

まあ、我ながら意味不明な学習方法だったとは思います。ドイツ語の教科書は一切読まず、発音だけ学んだ後にいきなり350ページある『これならわかる ドイツ語文法』を斜め読みし、最低限「インターネットの辞書があれば構文を把握できる」レベルに到達した瞬間からドイツ語論文講読の授業に突撃し、ドイツ語の論文を訳読しました。本当に意味不明ですね。でも私にはこれが一番適切だという確信があり、実際うまくいきました。

↓これは当時のドイツ語学習RTAの知見をまとめたメモ

hackmd.io

というわけで、晴れてドイツ語が読めるようになったことですし、この記事ではつむつきに出てきた入試のドイツ語問題を解説していきます。



なお、試験問題は以下のページから引用しました。「きららの中の東大」で参照されていた問題集は本文からウムラウトが全部消えていたのですが、以下の本では正しく表記されています。出た年度(と収録されている問題の年度)が違うだけで同じシリーズなので、おそらく組版段階の問題、たとえばウムラウト付き文字の活字が足りなかったとかそういう事故だと思われます。

dl.ndl.go.jp

問題

Wie aus Leblosem Leben entsteht, wie aus Lebendem Totes wird, ist auch ein Rätsel, das wohl niemals gelöst werden wird; doch das geht nur die Wissenschaft an. Aber das andre, die Frage nach dem Sinn und Zweck unseres Daseins, geht jeden Menschen an, der über sich und um sich blickt.

解答

いかにして生きていないものから生きているものが生じるか、いかにして生きているものから死んでいるものが生じるか、これらはおそらく決して解決されないであろう問題だが、それでも科学にのみ関係するものである。しかし、もう一方の、我々の存在の意義と目的に関する問いは、自分自身やその周囲に目を向ける全ての人に関係するものである。

解説

Wie aus Leblosem Leben entsteht, wie aus Lebendem Totes wird, ist auch ein Rätsel, das wohl niemals gelöst werden wird;

並列されている2組のwie以下が節として主文の主語になっていること、そしてdas wohl niemals gelöst werden wirdがRätselを修飾する関係節であること、この2点を把握する必要がある。ドイツ語文法の基本である枠構造が分かっていれば問題ないだろう。

LeblosemとLebendemとTotesは名詞化した形容詞で(元はleblosとlebendとtot)、ここでは中性形の「〜もの」という意味で解釈するのが適切である。いずれも強変化の形で、順番に3格、3格、1格。
また、A werden aus B(3格)は「AがBから生じる」「BがAになる」という意味である(例:Aus Freundschaft wird Liebe. 「友情が愛に変わる」)。初見でも文脈を踏まえれば正しく訳せるだろうが、werdenを「(主語)が〜になる」とだけ覚えていると戸惑うかもしれない。
また、gelöst werden wirdの並びにも面食らったかもしれない。gelöstが過去分詞で、受身の助動詞werdenとセットで「解決される」。最後のwirdは節全体の主語(Rätselを意味する関係代名詞das)と直接対応する定動詞で、推量の助動詞と解釈すればよい。

doch das geht nur die Wissenschaft an.

定動詞は分離動詞an|gehen「関係する」。
解答では前に出てきたauchとこの箇所のdochをセットと解釈し、譲歩「〜ではあるが、〜」のニュアンスで訳した。

Aber das andre, die Frage nach dem Sinn und Zweck unseres Daseins, geht jeden Menschen an, der über sich und um sich blickt.

文全体の主語は同格のdas andreとdie Frage以下で、それに対応する動詞はさっき出てきた分離動詞an|gehenである。das andreの後にはRätselが省略されていて、前に登場したein Rätselと対になっている。(現代ではandreのような綴りは口語的とされ書き言葉で使われない傾向にあるが、100年前はそうでなかった)
なお、aberは並列接続詞なので「定動詞第2位」の法則に影響を与えない。der über sich und um sich blicktは前のMenschenを修飾する関係節。

unseres Daseinsはunser Dasein(「我々の存在」)の2格、jeden Menschenはjeder Menschen(「それぞれの人」)の4格。









明日の記事は、れんず氏による「同人ゲートウェイドラッグとしてのきらら同好会・考」です。

スロウスタートの新キャラクター名を考える

スロウスタートのキャラ名って苗字の1文字目が数字になってるんですよね。一之瀬花名、十倉栄依子、百地たまて、千石冠、万年大会。

ということは、この法則に従えば新キャラの名前を予測できるということになります。予測してみましょう。

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【全文公開】那由多誰何の倫理学入門 【まちカドまぞく評論合同】

2022年の夏コミで頒布された合同誌『まちカドまぞく評論合同 まちカドのお楽しみ』に寄稿した謎の論考です。まちカドまぞくを倫理学の切り口から論じています。

まだ在庫があるそうなので、よろしければぜひ。他の記事も面白いですよ。

be-straighter.booth.pm

今になって読むと怪しい記述がちらほら見られるのですが、最低限としてケアの倫理関連の記述を若干修正し公開することにしました。たぶんまだまだダメな記述は残ってると思うんですが……詳しい本をちゃんと読む気力がない……というか文章も全体的に手直ししたい……面倒だからそのまんま放出するけど……


ところで、秋の文フリに向けてまぞく評論を書かないといけないんですよね。何もネタ思いつかない。ヤバい。どうしよう。













※この記事には、まちカドまぞく6巻の核心的なネタバレが含まれています

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【全文公開】まちカドまぞく vs. ウクライナ語警察【Micare vol.1】

まちカドまぞく6巻に登場するウクライナ語の文章に、ウクライナ語を学ぶ筆者が真っ向から向き合います。 原文の和訳、精読、文法と語法の解説、そして間違っている部分の訂正を通じて、まちカドまぞくのよりよい理解を目指します。
※ロシア語などスラヴ諸語の知識は必須ではありませんが、あればさらに楽しめます。

この記事は、東京大学きらら同好会の合同誌『Micare vol.1』に寄稿した記事の再録です。当該同人誌の公開猶予期間(1年間)が過ぎたため、自ブログで公開します。

utkiraracircle.github.io

この本の他の記事も読みたい人は……もう増刷の予定も残部もないので、国会図書館に行ってもらえれば。2冊納本したので、関東と関西の両方に入ってると思います。


また、同時に発行した『#FindOurStars vol.2』寄稿の「ナナチカ探偵団と不可能な虹」「拝啓、海の向こうの空へ」も公開してありますので、よろしければ。前者は地理地学学園ライトミステリ(ナナチカ要素あり)、後者はノーベル物理学賞2021記念SSナナ(チカ)SSです。

www.pixiv.net
www.pixiv.net


また、今夏の夏コミ発行のまちカドまぞく評論合同にも「那由多誰何の倫理学入門」という文章を書きました。那由多誰何の思想を倫理学(哲学の一分野)の視点から検討し、今後の展開を考察する記事です。よろしければ通販で是非。

メロンブックス: https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1564885
booth:
be-straighter.booth.pm

夏コミ発行の続刊『Micare vol.2』にも寄稿しています。「会員厳選!イチオシきらら」に星屑テレパスの布教文を寄稿したほか、「初恋*れ~るみすてり」と題した「初恋*れ~るとりっぷ」の二次創作SSも掲載してもらっています。きらら×時刻表トリックの新感覚トラベル(?)ミステリーです。こちらもよろしければ。

utkiraracircle.github.io



以下が本編です。誤植を修正したり注やリンクを追加したりした以外はそのままですが、致命的なミスはないはず。たぶん。

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【全文公開】東大生猪瀬舞概念【#FindOurStars vol.1】

この記事は、同人誌『#FindOurStars vol. 1』に寄稿した記事のweb再録です。当該同人誌の公開猶予期間(1年間)が過ぎたため、自ブログで公開します。


ブログ向けに書式等は整えていますが、本文は一切編集していません。今の状況に合わせて記述を更新したりも一切していないので、2021年6月に書かれた文章ということを念頭に読んでいただければ幸いです。
当時の私は理科一類に所属していて、理系の必修と最後のチキンレース死闘を繰り広げながら文転の決意を叫んだりしていたのです。もはや隔世の感があります。


たった1年前の文章なのに、今読むとテンションがいろいろ違いすぎて「ウッ……」となるところもあるのですが、あるがままを受け入れ、諦めて無編集で投稿します。今の視点で痛かろうが拙かろうが、いろんな意味で転機になった思い出深い文章なので。これそのまんま上げて大丈夫かなあ……



なお、記事内で言及のあるhaxibami先生のSS「#地理は地学」は、今のところ公開されていません。公開され次第リンクを追記します。
どうしても今すぐ読みたい場合、残部は少ないですが通販などで『#FindOurStars vol.1』を買うか、あるいは国会図書館でご覧ください。関西館と東京本館の両方に置いてあります。めちゃくちゃいい小説なので……



utkiraracircle.github.io

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1182458www.melonbooks.co.jp


関連記事:

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続刊のvol.2には、竹麻呂さんによる「都市工学徒猪瀬舞概念」が載っています。この記事で扱った内容のうち、都市工学(科)にフォーカスした論考となっています。
vol.2には私もナナチカでミステリを書いて寄稿しました。よろしければ『#FindOurStars vol.2』もお買い求めください。例に漏れず、国会図書館にもあります。

blog.takemaro.com

yuyusuki.hatenablog.com

utkiraracircle.github.io

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1193339www.melonbooks.co.jp

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