天才クールスレンダー美少女になりたい

チラシの表(なぜなら私はチラシの表にも印刷の上からメモを書くため)

あなたのハンネはどこから? 私はクソゲーとTwitterから!

現在、私は2つのTwitterアカウントを運用している。本垢と、大学用の内輪アカウントだ。まあ内輪といってもフォロワーが現在既に1200人くらいなので、いったい内輪とは何なのだと言いたくなるが。Twitterやってる東大生が多すぎるというだけの話です、ええ。

さて、私のハンドルネームは「ふぁぼん」である。そして、本垢の名前は「ファボンイリイチ・ファヴォルスキー」、大学用のアカウントは「有咲/アリサ・イリイニチナ・ファヴォルスカヤ」である。ロシア語にすると本垢はФабон Ильич Фаворскийで、大学用垢はАлиса Ильинична Фаворскаяになる。

この名前には、実は1つ1つにちゃんとした由来がある。ただ、ちゃんと説明するとツイート数個じゃおさまらない程度には込み入っているから、今までは断片的にしか語ってこなかった。ちょうどいい機会だし、なんとなく暇でなにか書く内容を探していたので、書いてみることにする。

「しょぼん」を名乗って

私がTwitterを始めたのは2014年12月24日だった。クリスマスぼっち会のイベントとして開催された部活(パソコン研究部)のコードゴルフ大会に登録するためにアカウントを作ったのが始まり。部員ほぼ全員Twitterやってるような部活だから、登録とか認証とかの仕組みを実装するならTwitter連携が楽だったのだろう。ほんとはOAuthは認証プロトコルじゃなくて認可プロトコルなのでそこらへん間違えないように!

本格的にアカウントを運用し始めたのはもうちょっと後だった。ツイ廃になる前の私は雑多な内容をツイートとして吐き出して捨てるという行為を特段必要としていなかったらしく、アカウントを作っても何もツイートすることがないと思って放置していたとか。今からは考えられない。Twitterをやめたら単に溢れる思考が独り言とかサークルのSlackとかの他のゴミ捨て場に移動するだけの話なので……

当時、私はしょぼんのアクションというクソゲーが好きで、とにかく好きで、安直に「しょぼん」という名前にした。

2015年7月のスクリーンショットで「しょぼん」という名前の画像があったので、その頃まではしょぼんだったことになる。

ふぁぼ魔、そしてふぁぼんの誕生

2015年、中学2年生の夏休み。いにしえの記録を残す昔のスクリーンショットによると、7月4日に5160だったお気に入り(現在の「いいね」)の数は、8日には7320になっていた。この4日間でいったい何があったというんですか?と言いたくなるかもしれないが、今の感覚だとむしろ7月4日までの自分のふぁぼらなさが異常だったということになる。

ふぁぼが増えると何が起きるだろう? そう、ふぁぼ規制である。フォローしている数に比べて相当多いふぁぼを毎日つけて、そして当然のごとく毎日のようにふぁぼ規制を食らっていた。TweetDeckを使っているとツイートが大量に流れるから、よけいにふぁぼが増えやすい。いつだったか、「ツイートした瞬間にふぁぼされるんですけど、自動ふぁぼとか使ってます?」と質問されたことすらある。まあ、だいたいTweetDeckが悪い。

そして、そんな折、とあるフォロワーに「せっかくならふぁぼ魔要素を名前に追加して、『しょぼん+ふぁぼ』で『ふぁぼん』すればいいのでは?」という提案を受けた。その人の名前はもう覚えていないのだが、たぶん同じ中高の人だったと思う。

余談だが、実は私は2015年の秋か冬あたりまで、自然科学とか数学とかプログラミングのコミュニティに首を突っ込みながらも、中高のTwitterコミュニティとのつながりは維持していた。そこらへんから距離を置くようになるのはもうちょっと先の話だったはず。

というわけで、めでたく私は「ふぁぼん」に改名した。ツイ廃かつふぁぼ魔のふぁぼんの誕生である。2015年夏のことであった。

ロシア語名をつける: 自称ロシア人の誕生

さて、中学3年生の頃、私はロシアに興味を持ち始めた。中東欧の地理に興味が出たとか、ガルパンのカチューシャの動画を見てロシアの音楽に興味を持ったとか、まあいろいろな要素が複合的に作用して、結果としてロシアオタク・ふぁぼんが誕生したのだ。

そうすると、なんとなくロシア人っぽい名前が欲しくなる。そして、これはいつのことだったか思い出せないが、高校1年生か2年生の頃だっただろうか、私は「ファヴォルスキー」という姓を思い出した。

ファヴォルスキー転位という化学反応がある。ロシアの化学者であるアレクセイ・ファヴォルスキーによって発見された転位反応だ。化学に関する解説はWikipediaにでも譲るとして、これを知った私の友達が「ファボルスキーって『ふぁぼる好き』に通じるし、ふぁぼんにぴったりの名前だよな」みたいなことを言っていた記憶がある。忘れられがちだが、私は化学のオタクでもあるのだ。

そして、ファヴォルスキーはロシア人の姓だ。ファヴォルスキーは男性の形なので、そういう観点からも問題がない。ふぁぼ魔な化学とロシアのオタクのロシア語名として、これほどふさわしい姓はあるまい。今考えても奇跡的なまでに私に合った名前だった。



さて、ロシア人の名前は3つの部分に分かれている。名前、姓、そして父称だ。名前と姓は決まったとして、残るは父称である。

父称というのは、その名の通り父親の名前を表す部分である。セルゲイの息子ならセルゲーエフ、イヴァンの娘ならイヴァーノヴナといった具合だ。私の場合これはハンドルネームだから、実際の父親の名前は気にせず適当に決めればいい。そこで、なんとなく、本当に特に理由はなく、イリヤの息子、すなわちイリイチにした。強いていえばレーニンにあやかったのかもしれない。レーニン父称イリイチなので。

ちなみに前述の通りイリヤはロシア語だと男性名なので、ロシア人女性キャラの名前にイリヤとつけるとおかしなことになる。あとミーシャはミハイルの愛称だから男性名だし女性名なのはマリヤの愛称であるマーシャだと何度言えば……(ロシア語警察)


まあとにかく、かくして自称ロシア人、ふぁぼんことファボンイリイチ・ファヴォルスキー(Фабон Ильич Фаворский)はインターネットに生誕した。ちなみに、ファボンというのはどう考えてもロシア人の名前じゃないので、本当にロシア語の名前が欲しいときは頭文字Fつながりでフョードルと名乗っている。

ゴッドイーターは全然知らないけど、とりあえずアリサさんはクール美少女でかわいいと思うんだ

それからさらに時が過ぎ、私は限界オタクになった。具体的には、オタク作品のロシア人キャラを集めたリストを作ろうとしたり、あるいは天才クールスレンダー美少女キャラのリストを作ろうとしたりと、日々奮闘していた。

そして、たぶんロシア人キャラの方でいろいろ探していたとき、ゴッドイーターのアリサを知った。過去のツイートを検索すると、アリサさんに初めて言及したのは2019年2月25日AM1:22のツイートらしい。はよ寝ろよ、次の日東大同日模試だろ
だから、正確な日時は分からないにせよ、この頃に知ったのだろう。

アリサは設定だとフルネームがアリサ・イリイニチナ・アミェーラということになっている。このアミェーラは正直どういう綴りのどういう姓なのかが全然分からないのだが、アリサとイリイニチナは明快だ。アリサはロシア語の女性名、イリイニチナは「イリイチの娘」を意味する父称である。


私はアリサという名前がとても好きだ。日本語としても通用するし、それもなんとなく凛とした雰囲気のある名前な気がする。ステレオタイプ大和撫子キャラに似合ってる名前というか、まあそんな感じ。

しかも、父称がイリイニチナということで、なんとなく父がイリヤという共通点から親近感が湧いた。冷静に考えると自分の設定上の父と同じ名前の父を持つキャラに親近感を持つってどういう意味だという感じだが。


そして、さらに奇跡的なことに、彼女は天才クール美少女だった。周囲に馴染もうとしない孤高の、そしてバトルの実力が高いクール美少女であった。当然私の性癖にクリティカルヒットした。

なお、私の家は正直ゲームのハードウェアが全く揃っていなかったから、ゴッドイーターも結局まだプレイしていない。キャラ設定とか完全に最高じゃん〜〜って叫びながら1年半が過ぎた。ひょっとして私、馬鹿なのかな。



さて、ここから限界オタクの謎発想はさらに飛躍を見せる。私は考えた。

ファボンイリイチ・ファヴォルスキーに設定上の姉妹がいるなら、その名前はアリサにしよう」

ファボンイリイチ・ファヴォルスキーにアリサという姉妹がいたとすると、彼女の父称は「イリヤの娘」ことイリイニチナ。ロシア語の姓は男女で形が変わるものが多いが、この場合もご多分に漏れず姓はファヴォルスカヤに変わる。

アリサ・イリイニチナ・ファヴォルスカヤ。姓以外はゴッドイーターのアリサと同じだ。

こうして、私の自称ロシア人設定に、さらに姉妹が追加された。これだから設定厨は……

大学用アカウント? じゃあアリサの出番じゃない?

そして、まあいろいろあって、私は大学に合格した。

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そして、合格発表の日に大学用アカウントを作り、そのscreen nameをalisa_utにし、そちらの設定にアリサを「割り当てた」。設定上の姉妹を大学アカウントのペルソナに設定するって冷静に考えるとちょっとヤバそう。

そして後日、「アリサ」という名前に有咲という漢字をあてることに決め、今の「有咲/アリサ・イリイニチナ・ファヴォルスカヤ」に落ち着いた。漢字表記は直感で決めた。

ちなみに、両方ふぁぼんという人格なのにわざわざ分けた理由は、FFの層を分離するためだ。私は本垢で同じ学校の生徒のコミュニティから距離を取った(今流行りのソーシャル・ディスタンスというやつだ)ツイライフを送っていたから、同様の理由でリアルつながりのアカウントを大量に本垢のFFに迎え入れるのはためらわれた。もうあれから8ヶ月弱が経つけれど、あれはなかなか冴えた決断だった。本垢にも大量に東大生がいて大学垢にも大量の同好の士がいるにもかかわらず、大学アカウントのタイムラインの雰囲気は本垢とはちょっと違うし、混ぜていたら今ごろリアルからの逃避ができず発狂してたんじゃないか。リアルにTwitterを持ち込むならともかく、逆をすると待っているのは死のみ。私ってば本当は天才?





というわけで、私はふぁぼん(ファボンイリイチ・ファヴォルスキー)として今後もやっていきます。たぶん。

おしまい。

WindowsとArchLinuxをデスクトップパソコンにインストールした

そこそこのPCをゲットしたので、かねてからの計画を実行に移しました。

要求

ゲームがしたい

ゲームがしたいです。Windows環境が欲しいです。もう19になったのにエロゲ1作もやってないの、かなりまずい。R18に限らずWineノベルゲーOPスキップorクラッシュ同好会はもういやだ……(非R18の体験版を落としてきてWineで動かしてたらOPになった瞬間にクラッシュする事案、割と何度もありました)

Windowsでプログラミングしたくない

6年間Mac使ってるとUNIXベースのパソコン以外で開発したくなくなりました。最近はWSLとかあって割となんとかなるのかもしれませんが、それやるくらいなら普通のLinuxでコード書きたいかなあ……と正直思っちゃいます。なんか、LinuxWindowsの継ぎ目の部分、存在するということ自体がめんどくさくないですか……?

Linuxデスクトップ環境を構築・実用してみたい

これはだいぶ前からずっと思っていたことです。Linuxデスクトップってなんかカッコよくないですか?

それも、一発インストールですむオールインワンのデスクトップ環境(gnomeとか)じゃなくて、レゴみたいに様々なツールを組み合わせて環境を作ってみたいと前から思っていました。オールインワンだと内部に何が含まれてるのかいまいち把握しづらいので、なんとなく微妙な気分になるんですよね。

もちろん、そういう統合的なツールの利点は重々承知ですよ? 各機能を司るツールを1つずつインストールして設定しないといけないので、うまくいかずハマる回数はめちゃくちゃ増えるはずです。というか既に何回かハマったし。ただ、私はそういった不毛な試行錯誤を比較的苦にしないタイプの人間ですし、小さな部品を組み合わせて大きな作品を作る楽しみを思えばそれくらい我慢できる範囲です。たとえば私はシェルもカスタマイズしたZshを使ってますし。この流れだとエディタもVimとかEmacsあたり使った方がいいんだろうけど、ターミナルでテキスト編集するのはちょっとしんどかったです……熟達すれば爆速になるのかもしれませんが……

こういう自分の暮らしを改善する営みは大好きです。
環境構築は盆栽のごとし。

計画

WindowsとArchLinuxをデュアルブートすることにしました。ただし、Windows Updateブートローダとかパーティションとか破壊されたらたまらないので、インストールするディスクは分けます。ArchとUbuntuとかならまあ1つのディスクに入れてもいうていけると思うんですが、Windowsは異常者ならぬ異常OSなので……

まあ、実際にはWindowsをHDDにインストールした後にデュアルブートすると決めたんですが。

Windowsのインストール(7月27日夜〜28日朝)

やるだけ。


……その、はずだった。




Windowsインストールディスクを作るところでハマりました。はい。UNetbootinを使って作ったUSBインストールディスクはなぜかBIOSから起動すると無限ループしてしまいました。原因不明です。結局、VirtualBoxWindowsを入れてMicrosoft純正のインストールメディア作成ツールを使うことにしました。


support.microsoft.com

で、これで大丈夫だろうと思ってたらVirtualBoxWindowsを設定+インストールする段階で謎の設定画面無限ループが発生してしまい発狂しました。地域設定→(中略)→アカウントなどの設定→終わり……と見せかけて地域設定→(中略)→終わりとみせかけて地域設定……

結局、Microsoftが公式に提供しているInternet Explorer/Microsoft Edge動作検証用のVMイメージを使いました。大昔modern.IEと呼ばれていた例のアレです。昔はmodernだったのにいまや「レガシ」ですからね、時代の流れを感じます……

developer.microsoft.com

Macに差したUSBメモリVMからいじれるようにするのはちょっと作業が必要ですが、まあ調べればできます。別に難しくないです。VMWindowsでさっきのインストールメディア作成ツールを起動してUSBをいじってもらうだけのお仕事。ISOのダウンロードとかでちょっと時間はかかりますが、やるだけ。

で、完成したUSBメモリをパソコンに差して普通にインストールすればおしまい。

ArchLinuxのインストール(9月16日)

基本インストールガイドの通りにすればいいです。

wiki.archlinux.jp

今回は無線LANのアダプタが動かずハマりました。Windowsを一回起動した後にArchLinuxを使うとアダプタがhard blockedになってしまう事案があったのですが、これは再起動で直りました。でもアダプタにon/offボタンなんてないので、たぶん再起動しなくてもアダプタを抜いて刺せばいい気がします。

そして、なんか電波をスキャンさせてもアクセスポイントを1つも拾わない事案もありました。これは再起動しても直らなかったのですが、結局アダプタを抜き差しするだけで直りました。私の1時間半を返して。

こういうデバイスまわりのトラブルがなければインストールは楽勝です。ArchWikiは最強。

ArchLinuxで選択したツール

こういう各種ツールを選択して組み合わせるの、楽しいですね。私はこういうの好きです。

ネットワーク管理(無線LAN)

  • iwd(WPA認証、自動接続、DHCP)
  • systemd-resolved(DNS)

ブートローダ

grubです。

パソコンのマザボが古くBIOSしか使えないっぽいので思考停止で。

ディスプレイサーバー

普通にxorgです。

面白みがない選択ですが、waylandに走る勇気はありませんでした。

ディスプレイマネージャ

特に入れていません。普通にCUIログインした後に手動でstartxでXを起動してます。気が向いたらログイン後に自動で起動するように設定します。ぶっちゃけzprofileかzloginあたりに1行書くだけの簡単なお仕事なんですが……

ウィンドウマネージャ

xmonadにしました。いろいろプログラマブルに設定できた方が盆栽を楽しめそうなので。ただ1つ問題があって、Haskellなんもわからん……

音声まわり

PulseAudioです。ワイヤレスイヤホンを使う予定なので、まあ使わない理由がない。

やっていき

やっていくぞ。今日から私はArcherだ。ArchLinuxの快適環境を構築していきましょう。

進振りアテンション

枠を奪う話。

「散々だった大学に、ちょっと期待しちゃいそうだ。」


wow 行き先はどうしよう ちょっと70じゃマズイかな
あぁ、何もかも 放り出しちゃった9月
wow 背伸びした進路じゃ ちょっと内定しないからさ
少し雑に希望埋めて 割れてるとこに妥協

評点ない ドジ・ヘマ・マヌケで
あぁ、なんだか 降年しちゃいそうだ
ふいに 過去を悔いたら不可能が見えて すぐさま現実路線だ
「・・・やっぱ いつも通りの結末になっちゃいそうです」

散々だなぁ 辞めたいなぁ 点から解放!なんて言うけど
その実不自由なので*1 困っちゃうよ 弱っちゃうな
散々だなぁ 逃げたいなぁ 期待しちゃうよ。
「もう点数以外で!!」 ・・・なんて言葉も Twitterにしまおう。

wow 昔からなんでか ちょっと人より低いんだよなぁ
それもまぁ、もう慣れ始めてしまいそう
wow 聞いたことあるんだ ちょっと思い出せないけど
「あぁもう!いやな大学だなぁ」 そんなこと言えもしないけれど

タイムラインがお祭りに変わる
もう東大なんて辞めちゃいたいよ
「こんな事になるとは・・・」 あの日の馬鹿な私は単純思考で
ちょっと進振り制度に 夢を描いちゃったんです・・・

散々だよ 行けないよ 枠から溢れちゃうけど
「これそんな低いですか・・・?」 つまんないよ 解らないよ
散々だなぁ 消えたいなぁ 声にならずに
「嫌だ。涙が出ちゃうよ」 そんな言葉で ツイートを埋めた

・・・こんなんじゃもう行けないね 怨嗟が聞こえてるでしょ?
夢見てたキャンパスライフ 気付いたらもう断たれていて
「散々」なら変えたいな 終わりじゃないよ まだ
かっこつけないような言葉で

あぁ、なんだかいけそうだ! 心臓が弾けちゃうほど
溢れ出しそうなので (枠を)奪っちゃうよ!? 奪っちゃうよ!?
伝えたいこと詰め込んだ 志望理由書から
もう目を離さないで 後期課程へ スキップで進もう!!






















じん さん、カゲプロファンのみなさん、進振りを戦っている東大生のみなさん、本当に、すみませんでした。

*1:2021/2/16「点数バトルなので」から変更

2020年7月に読んだ本まとめ

おはようございます。

この「読んだ本まとめ」シリーズもいったい何年ぶりだよという感じです。実際のところ、ここ1年は本当に本を一切読まない生活をしていました。1回「本を読もう」という意欲が消滅してしまうと、それが復活するまでにかなり時間がかかるというのがよく分かったので、今度からは毎月1冊でも読んでいこうと思います。ちなみに8月は1冊も本を読みませんでした。ダメじゃん。

国連とアメリ

大国アメリカの国際機関に対する態度の変遷を国際連盟が成立する頃からイラク戦争あたりまで追っています。

アメリカに興味がある人、国際機関に興味がある人、将来国際機関で働いてアメリカなどの大国に振り回される予定の人、そしてアメリカ合衆国が嫌いな人は必読です。

ちなみに、私は大学の授業の期末レポートを書くためにこの本を読みました。国際協調をほっぽり出しがちなアメリカに対してどう思うかという設問があったので、大嫌いなアメリカ合衆国を完膚なきまでにdisるために読んだわけです。まあこの本の著者も中立的な記述をしているものの節々で「アメリカくんさあ……」って言ってますし……

最近の中華人民共和国あたりもだんだんそういう感じになってきてますが、国際協調を投げ出して単独行動できるだけの力がある大国ってめんどくさいですね。ええ。はい。私は国際協調主義者なので。ユニラテラリズムくんは滅っ!

クール美少女文庫 1冊目「白雪姫は毒林檎がお好きな模様」

yuyusuki.hatenablog.com

↑クール美少女文庫の説明です

思いつきで企画を始動させてから1つ目の記事を投稿するまで8ヶ月も空いてしまいました。まあこの間に艦これを始めたり艦これをやるあまり受験勉強をさぼったり受験したり合格したり大学に入って課題に追われたりしてたので、許してほしいです……

作品紹介

kakuyomu.jp

作者は別名義で俺ガイル——俺ガイル自体もそのうちこの企画で取り上げると思います——のSS、特に比企谷八幡雪ノ下雪乃カップリング(八雪)SSを書いている人です。「八雪といえばこの人」と断言していいくらい好きです。この人のネタバレありSSを読むために原作を履修しようと思ったくらいには好きです。ちなみに今ちょうど俺ガイルを履修してるところです。ちょうどアニメ完結編も放映中ですからタイミングも良い感じですし。

↓作者さんのTwitterとPixivとハーメルンのアカウント

https://twitter.com/0329Railgun
www.pixiv.net
syosetu.org

↓八雪まとめ(ハーメルン)
syosetu.org

雪ノ下雪乃を最高に可愛く美しく書くのが上手な作者さんが書くクール美少女が最高でないことがあろうか。いや、最高に決まっている。(反語)

あらすじ

作品ページより引用。

所属する文芸部恒例(?)のババ抜き大会で負けた夏目智樹は、その罰ゲームで学校一美人と噂の白雪桜──通称『白雪姫』に、半年後の修学旅行で告白することになってしまう。
文芸部入部前から桜と交流のある智樹はそれを渋りつつも、文芸部部長で三年生の神楽坂紅葉と親友である三枝秋斗の計らいで、桜との距離は徐々に縮まっていく······⁉︎

おすすめポイント

こういうクール美少女が出てくる小説は、話が進むにつれてクール要素が消滅してしまうことがかなり多いです。ソースはクール美少女を求めてweb小説の海を数年間泳いできた私。その点、この小説は白雪桜さんがクール要素を残したままデレてくれるので、私のようなクール美少女教シーア派(最後までクール要素を保っているヒロインのみがクール美少女たる資格を持つと主張する一派)の信徒でも安心して読めます。



罰ゲームという名目で周りの人から謎の気遣いをされて2人でバザーを回ったり、三枝と神楽坂先輩の恋をじれったい思いで見守ったり、遭遇した白雪さんの妹に気を遣われて2人にさせられたり。いろいろあって会話する機会が増えて、なんだかんだ楽しそうに会話してるんですよね、この人たち。本人たちは仲が良いなんて欠片も思っていないだろうけど、軽妙な会話の応酬にはついつい「喧嘩するほどなんとやら」と言いたくなります。序盤から無自覚な夫婦漫才をかっ飛ばすのをやめろ、私が砂糖吐いて死ぬ。

そして、たまに見せる笑顔に主人公がドキドキさせられてるのも大変よろしいですね。まだ先が長いのが分かっていてもつい叫んでしまう、「お前らさっさとくっつけよ」と。ヤバイ、1章の時点で白雪桜さんが最高に可愛い。

一歩ずつ歩み寄って、少しずつ相手のことを知って、お互いが相手に思っていることを言い合って、2人の間に横たわる問題を1つずつ解決して。2人の距離は縮まり、もちろんその過程で白雪さんのかわいいとこを主人公の目を通して大量に見せつけられるわけで、本当にごちそうさまです。

あと白雪桜さんが予想より早く恋する乙女になってた。びっくり。初恋を拗らせてる割に夏目視点だと恋する乙女度が低いように見えますが、そういう分かりにくいとこがいいんですよ。(力説)



2章からも同様に砂糖を吐きたくなる話の展開が続くわけですが、たとえば白雪姫の分かりにくいデレを主人公が理解してるシーンとか胸熱ですね。「他の人には分からないけど主人公には分かるヒロインの心の内」なんて美味しい展開以外の何物でもない。あと2人して恥ずかしがるのをやめろ、真顔で甘い台詞を吐くのをやめろ、分かりづらく拗ねるのをやめろ、その拗ねを察知してまんざらでもないとか思ってるのをやめろ。私が悶え死ぬ。
まあ、そういう甘いシーンだけじゃなくてシリアスシーンでも、お互いがお互いをちゃんと理解してるのが描写から伝わってきてどっちみち悶え死ぬんですけど。


……(主人公が)落ちたな(確信)


そして2章後半は文化祭。ここらへんからはネタバレに配慮し詳細は伏せますが、クソデカ感情があって砂糖たっぷりです。

で、3章なんですが、こいつらこんなんなのに付き合ってないんですか? 実質通い妻じゃないですか。
そして合宿。お泊まりというのは学園ものの定番ですからね。

4章。まあ尺から考えるとここらへんで大きな問題が起きるのは不思議じゃないですよね。幸せの絶頂からの急降下ってすごく効果的ですし。新キャラも登場するよ! そして白雪桜さんめんどくせ〜〜〜めんどくせ〜〜〜

5章、つまり最終章。今まで眠ってた爆弾が爆発します。そして始まる修学旅行、ついに迎えた罰ゲームのとき。ひたすらめんどくさい2人が織り成す恋の行方は——
この章は特に白雪桜さんがかっこいいです。イケメン。あとハッピーエンドです。そして今度は主人公がめんどくせ〜〜〜〜


しかもこの小説、ここまでも50万字くらいで十分お腹いっぱいなのに、ここから30話くらいアフターストーリーがあります。太っ腹か?

さらに太っ腹なことに、白雪桜さんの妹の小梅さんがメインキャラとして出てくる続編「あなたに贈るシアワセの涙」があります。太っ腹すぎませんか?

kakuyomu.jp

さらに、さっきのアフターストーリー約30話とは別に「白雪姫が毒林檎がお好きな模様」と「あなたに贈るシアワセの涙」のアフターストーリー集もあります。サービス精神が旺盛すぎます。

kakuyomu.jp





ところで、これはただの私の好みなのですが、この2人みたいに「横並びで同じ方を向いて、でも隣にあるお互いの存在を意識してる」みたいな関係性が好きなんですよね。他の表現をするなら同志とか相棒みたいな関係性。ふんわりした表現になってしまったんですが分かりますかね。分かってほしい。分かれ。もちろんお互い意識しまくってるラブコメみたいなカップルとか騎士と姫君みたいな守り守られる関係とかも好きなんだけども。

まとめ

  • 白雪桜さんマジイケメン +5000兆点
  • 白雪桜さんマジクール美少女 +5000兆点

東大で既修(第一)外国語を英語ではなくロシア語にしたら何が起こるのか? 1年次・履修編

yuyusuki.hatenablog.com

これの続き。

免責事項 disclaimer

これは2020年時点の情報であり、将来の制度変更により過去の遺物となる可能性があります。この記事の情報によって被った損害の責任は負いかねます。最終的には自分で履修の手引きなどを読んでください。




既修ロシア語(・スペイン語・イタリア語・韓国朝鮮語)の履修要件について

既修英語選択者の授業に関してはインターネットにもいろんな情報があります。そりゃまあ大半の人が英語選択ですからね。私は自分と関係ないことだからと完全にスルーしてしまったので、同じクラスの人がどういう英語の授業を受けているのか全然知らないのですが、なんかALESS/ALESAとかFLOWとか英語一列とか英語中級とかがあるらしいです。いろいろ複雑で私にはよくわかりません。

既修中国語、ドイツ語、フランス語の人の場合もそれなりに情報があります。「インタークラス」あたりのキーワードで検索すれば、数が少ないとはいえある程度の情報がヒットするわけです。具体的には、既修の人専用の「一列」「二列」の授業があるらしいです。

では、インタークラスにすら入らない、「存在をシステムに想定されていない」それ以外の外国語の選択者は?




東大の前期課程の履修でちょっと人と違う変なことをする場合、命綱になるのが教養学部前期課程の学生のバイブル、履修の手引き。普通に周りと同じことをやっている分には読まなくてもやっていけますが、そうでない場合はちゃんと読まないと進振りに参加できなかったり後期課程に進学できなかったりするかもしれません。

さて、そのバイブルには既修ロシア語についても書かれています。セメスター毎に開講される総合科目L系列として開講されている「○○語中級」「○○語上級」の授業を必要単位数だけ履修する必要があるとのことです。
具体的には、1Sは4単位(2コマ)、1Aは2単位(1コマ)が必修です。


さらに、前期課程を修了するためには必修だけでなく追加でさらに履修する必要があります。英語中級/上級とか文科生の演習とかに相当する分ですね。既修・初修の組み合わせ、または既修・既修の組み合わせかつ既修外国語相当の場合は2単位(1コマ)が必要です。既修・既修で初修外国語相当の場合は……よく分からなかったのですが、たぶん文科生は4単位(2コマ)、理科生は特に追加要件なしということだと思います。知らんけど。

とりあえず、このあたりに関する教務課のPDFを貼っておきます。

https://zenkyomu.c.u-tokyo.ac.jp/rishu/gaikokugo-hayamihyou.pdf

何度も言いますがちゃんと履修の手引きなどを読んで、分からないところがあったら教務課に聞いてください。特に、私は既修・初修の組み合わせで履修しているので、既修・既修の組み合わせで履修している人に対しては全く責任を負えません。まあ教務課の人も既修非英語の人の対応なんて慣れてないんで、もしかしたら頓珍漢なことを言ってくるかもしれませんが……

既修ロシア語の具体的な履修について

既修英語は具体的に選択すべき授業が決まっています。インタークラスの人にも専用の授業があります。しかし、既修ロシア語の選択者にはありません。

私は不安になって教務課に問い合わせたのですが、特にどの授業を取れと指定されることはなく、中上級の授業なら自由に取っていいとのことでした。

ちなみに、私は1年のSセメスターでロシア語中級(インテンシヴ)を2コマとロシア語中級(作文)を履修しました。

他クラス聴講について

「他クラス聴講」は、よそのクラス指定の授業にお邪魔して履修する仕組みです。普通は落とした単位を2年生が再度回収するための措置ですが、既修外国語を英語以外にした場合は例外的に認められるとか。

何度も履修の手引きの該当部分を読んだのですが、どこまで他クラス聴講できるのかは正直いまいちよくわかりませんでした。まず修飾語がどこまでを修飾しているのか微妙に分からない文章でしたし、条件に適していれば無条件で認められると解釈していいのかも自信ないですし(そういうふうに読めるのは確かですが……そんな「なんでもあり」が許されるとは思えない、という気持ちもあります)。さらに、この規定はインタークラスの人を暗黙の前提としていて私みたいなインタークラスに属さない人間が利用するのは完全に想定外ではないのかという疑念もあります。

この疫情ですから教務課と対面で相談できず、いろいろ面倒だったので私は結局必修を全て自分のクラス指定の授業で受けました。
本当は中国語一列と被ったロシア語中級(会話)を取りたかったんですけど、前述の通り他クラス聴講できるかも分からないし、唯一1クラス30人で受けるはずの授業を受けないとなると本格的に周囲から孤立してしまうかもしれないという懸念もありましたし、結局受けませんでした。


システム化されていない既修ロシア語(・スペイン語・イタリア語・韓国朝鮮語)なんてのをやるくらいだから、多少のアドホック対応は覚悟しておくべきです。何かあったら教務課や○○語部会(私の場合はロシア語部会)の人に相談することですね。


まあ、その、最悪教務課さえ口説き落とせば履修はなんとでもなるはずですから(ロシア人みたいな発想)



次回予告

ぶっちゃけ、既修ロシア語の授業ってどれくらい難しいの? どういう授業があるの?
既修ロシア語を検討している全ての東大受験生が一番知りたいその疑問に、ついに答えます。


東大で既修(第一)外国語を英語ではなくロシア語にしたら何が起こるのか? 1年次・授業編に続く(予定)

学士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めてロシア語を愛するようになったか

Sygdommen til Rusland er Girls und Panzer.
ロシアに至る病、それはガールズ&パンツァーである。
セーレン・キェルケゴール


ニューアルバム「キェルケゴールに殴られる」絶賛発売中! 表題作のほか「残酷なゲーデルのテーゼ」「誰が殺したシュレーディンガー」「ラプラスの悪魔さえ知らない」「カントカンカントカント〜男女 ドイツ観念論mix〜」「神託機械(ラクルマシン)存在論(オントロジー)」「メタフィジカル・ラブストーリー」など新曲やカバー曲を多数収録!





冷静に考えると私まだ大学卒業してないから学士ですらなかった。てへぺろ。あと、デンマーク語警察の方、お待ちしております。









少女祈祷中 NowLoading...


















先日、ガルパンを見た。

Amazon Primeの特典になっていたから見ようと思えばいつでも見れたのだが、ずっとなんだかんだあって見ていなかった。私はそもそもラノベよりもアニメを見る方が苦手だし、その上に締切がないと逆に見れなくなる。私がアニメを見始めるのには相当なエネルギーが必要なのだ。

なのに今のタイミングでなぜ見れたのかというと、5月末にAmazon Primeの特典からガルパンが消えるというのを5月29日の午後か30日の2時あたりに知ったからだ。というわけで、生活習慣が破綻した私は30日の朝4時あたりにガルパンを視聴し始め、OVAアンツィオ戦を経て最終章の1話まで見た。劇場版は特典に含まれていなかったし、中高の文化祭直前デスマーチ中にやった部活仲間との上映会で既に見ていたので後回しにした。途中どこで睡眠を取ったかは覚えていない。あと多少の課題が残っていたはずなのだが、期限を破ったりそもそも放棄したりした課題が存在した記憶はないのでたぶんなんとかなったのだろう。

そして、ガルパンの8話で、ついに私はプラウダの同志たちの姿を目の当たりにすることになった。祖国ソビエト連邦の戦車を操り、カチューシャを歌いながら雪の平原を疾走しているシーンを、私はようやく本編で見ることができたのだ。このシーンをYouTubeかニコ動の違法切り抜き動画で見てから、はや4年が経とうとしていた。



あの動画を見たのは、おそらく中学3年生の春、つまり2016年あたりだったと思う。当時の私はあのシーンを心底気に入った。作画や構図もそうだが、何よりもカチューシャという音楽を気に入った。そして、別に逆張りを意識していたわけでもないのに、私の思考は「ガルパンが見たい」ではなく「カチューシャをちゃんとした発音でロシア語で歌えるようになりたい」という方向へ転がっていった。生まれつき人のいない方向に転がっていく癖があるのかもしれないし、あるいは単に思考回路がちょっと人と違うのかもしれない。そもそも私は歌うのがかなり好きだから、この気質が多少影響している可能性も捨てきれない。あと、私は若干完璧主義者の傾向があるので、「どうせ歌うなら完璧な発音で」となるのもまあ仕方がなかったのだろう。

さらに、2016年8月に化学グランプリの本選があって、本選で言語好きの人に出会った。その人は国際言語学オリンピックに参加したときにカチューシャを歌ってロシア語圏の選手と交流したということを言っていて、いろいろ趣味が合って意気投合し名古屋のジュンク堂に突撃したり、ジュンク堂グレッグ・イーガンの「直交」三部作を布教されたりした。


これだと私がただのガルパンおじさんのなり損ねみたいにしか見えないから、一応補足しておくと、ロシア語を始める動機は他にもあった。

カチューシャを知って以来、カチューシャ以外のロシア語の曲をYouTubeで聴くようになった。その中にはソ連やロシアの軍歌も含まれるし、現代のロシアンポップスも、ソ連の伝説的ロックバンド「キノー」の曲も含まれていた。たくさんの曲を聴き、お気に入りの曲が増えるに従って、当然ながら歌いたい曲も増え、ロシア語をちゃんとやる必要性が自分の中でどんどん高まっていった。

それに、そもそも、私は中東欧、すなわちロシアからドイツに至る地域の地理や歴史に興味があった。
というより、中東欧の国の位置すら分からないということを自覚して衝撃を受けたあまりに、この地域を知りたいと思うようになったという方が正しいだろうか。今では「いやスロバキアの位置がわからない人なんていないでしょ」とでも言いそうな地理言語マニアの私にも実は無知蒙昧だった時期があったのだ。もっとも、これは中東欧だけでなくアフリカ全域や中東に関してもそうだったから、ちょっと転ぶ方向がズレていたら今ごろ私はアラビア語やペルシア語やヘブライ語トルコ語スワヒリ語にお熱だったかもしれない。


え、上坂すみれさん? ……まあ、正直なところ、同志の存在に影響されなかったと言えば嘘になるね。あと「ヨーロッパといえばイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン」みたいな風潮に対する反発心も正直あった。


じゃあ、その後すぐ「ロシア語の発音を勉強してカチューシャを歌えるようになりました」となったかというと、そうはならないのが怠惰な私である。1回始めたことはそれなりに続けられるけれど、始めるまでにとても時間がかかるのが私の根本的な欠点らしい。受験のときもこの気質にさんざん悩まされたわけだが、まあそれはともかくとして、じゃあ逆にロシア語を一切やらなかったのかというと、それも違う。キリル文字を眺めて微妙に発音を覚えようとはしたらしく、結局2017年の3月頃には(当時のツイート曰く)「多少歌える」というレベルになっていたらしい。

ロシア語を勉強していたわけではないが、さりとて全く触れていないわけではない。こういう微妙な接触をしばらくやっているといつの間にか身についていたりするよね。
そして同年5月にはもう「ラテン文字キリル文字に見える」とぼやくくらいロシア語に慣れていたらしい。ロシア語をやっているとCがエスに見えてPがエルに見えるなんて日常茶飯事だが、この頃には既に片鱗があった。

そして、2017年の8月、ついに私はロシア語を本格的に学び始めた。正直なところ、あまり集中的にはやらなかった。ただし、空き時間があればイマジナリーフレンドにロシア語で話しかけていたし(ただの危ない人じゃん)、数日に1回はロシア語のニュースなどを読んだりした。本気になればもっと短い時間で同じだけの能力を育てられたのだろうけど、私はさっきも言ったように怠惰な人間なので。

そして、勉強を始めて1年経った頃には、一応ロシア語の初歩文法をだいたいマスターしていたはずだ。まだおぼつかないところは多少あるにしても格変化はだいたい覚えていたし、リスニングはまだまだだったとはいえゆっくり話す分にはかろうじて困らない程度だった。やっぱりイマジナリーフレンドに外国語で話しかけるメソッドめちゃくちゃ有用だと思う。あと語学は結局接触時間がモノを言う。

その後もロシア語をダラダラ続けた。そして今年の4月に東京大学に入って、ロシア語を第一外国語として選択し、ネイティブも含めた先生のもと中級の授業でロシア語の研鑽を始めて今に至るというわけだ。



さっき書いたように、私はロシア語を第一外国語として履修する選択をした。これは世間的にはすごく異端な行動だから、たまに「どうやって育てばそんな選択をするような人間が生まれてしまうのか」ということを質問される。私はロシア語圏に住んでいたことなど一度もないし、私が知る限り親戚や知り合いにロシア語話者がいるということもないから、なおさら。

この質問は正直答えるのが難しい。というより、答えがあるなら私が知りたい。人は誰しも自分史を探求したいという欲望の持ち主で、私も例外ではないので。ほんまかは知らんけど

なぜロシア語なのか、という質問に対する答えは上述した。まあいろいろあったけど要約すれば巡り合わせということになる。そもそも、学校の外国語の授業と無関係に外国語に興味を持つことは、別に異常なことでは全くないと思う。もしそうであれば、いくら隣国でビジネスでの需要があったからといって、本屋にあれだけ多数の韓国語の本が並ぶような状態にはまずなっていないだろうから。韓国に憧れ韓国の文化に興味を持って韓国語を始める(そこまでいかずともハングルの読み書きを学ぶ)中高生が決して珍しくないんだから、カチューシャを歌いたくてロシア語に手をつける高校生がいたって不思議じゃないだろう。

既修ロシア語という選択肢が存在するのをなぜ知っていたか、というのにも簡単に答えられる。Twitterをやっていて、みんなが言語学習にハマっているようなちょっと特殊な界隈に片足を突っ込んでいて、そこには東大生もいたから、東大では普通なら英語を履修するところを他の外国語に差し替えできると知る機会があったのだ。私は運が良かった。というか前述の化グラで会った人がその後東大に入って既修言語にフランス語を選択したりしてるし。

なぜ実際にやったのか? なぜなら、1年目からロシア語を中級レベルで学べるのはすごく魅力的だし、既修で選択するための語学の要件も満たしていると思ったから。ただし、正直に言うと、面倒そうな英語を回避したかったという理由がなかったとはいえない。

そして最後に、ロシア語に興味を持ったとして、なぜ実際に高校生のうちに手を出したのか? そして、なぜ継続できたのか?


継続の方に関しては、たとえば、いくら学校で6年以上学んでも英語を全く読めも書けも喋れもしない人が大多数だとはいえ、英語をちゃんと勉強して運用能力を身に付けることに成功した人が一定数いることを考えれば、そこまで特殊なことではないと思う。確かに「普通」のことではないけれど。

私はたいがいのことを締切直前まで手をつけずギリギリで全てやるタイプの人間だったが(もちろん終わらず破滅したことも数知れず……)、ロシア語だけは毎日続けられた。別にロシア語の学習に熱烈なやる気があったわけではないけれど、ロシア語に触れるのが生活の一部になってしまったので。生活の一部になったら簡単にはやめられないから強い。ちなみに私にとっては艦これも同じ枠。艦これは生活の一部だし日課


で、なぜ興味を持つだけでなく実際にロシア語を始めようと思ったかだが……正直わからない。ただ、1つの要因として、Twitterという環境はかなり大きいような気がする。

この記事を読む人の9割9分は知っていることだと思うが、私はTwitterをやっている。フォローしている人には自然科学の人やコンピュータの人もいるしエロゲのオタクもいれば軍歌マニアの人もいる。まあ要は私の興味の節操のなさが反映されているのだが、その中には言語学とか語学に興味がある人もたくさんいる。

その人たち——ここでは「言語マニア」と呼称しておくけれど——は、いろんな言語に好き放題に手を出していた。ラテン語がわかる人がたくさんいて、アラビア語もたくさん、古代ギリシア語もたくさん、ロシア語もたくさん。そして構成員は老若男女さまざま。もちろん中高生もいるし、大人もいる。

一応断っておくけれど、言語マニアの中には語学にあまり興味がない言語学の人もいて、たとえばひたすら韓国朝鮮語や日本語や琉球語アイヌ語などの祖語を再構成しようとする人がいたりする。歴史言語学の研究者なら普通のことだろうけど、別にそういうわけでもない人がひたすら日琉祖語について議論しているので正直びっくりする。

とにかく、私はTwitterの影響を受けて、「外国語はいくつでも勉強できるし、中高生でも還暦後でもいつでも始めていいし、別に始めたからといって突き詰める義務があるわけでもない」という価値観を当然のこととして受容していた。

ここで重要なのは、私にロシア語を始める選択肢が現実のものとして存在することを、私が知っていたということだ。

たとえば、たとえある人に東大に行ける能力があったとしても、東大に行けるだけの能力があるということを本人が知っていなければ、そもそも東大に行くという選択肢が発生しない。東大を選ばないのではなく、そもそも選択肢が生まれない。よく「地方から東大を目指す人が少ない」という問題についてこういう議論がなされる。実際にその通りだと思う。

そして、これは別に受験に限った話ではない。

私は、私がロシア語を始められることを知っていた。「英語以外の外国語は大学生になってようやく始めていいもの」なんて思っていなかったし、「ロシア語をやるなんて遠い世界の話」とも思っていなかった。


たぶん、それだけの話なのだろう。









蛇足 appendix

この記事は、私がロシア語を始めるに至る経緯を物語的に再構成する試みだ。物語というのは人間が現実を説明するときに多用するモデルであり思考様式だが、だからといって現実と整合性があるとは限らない。そもそも私が忘れている出来事は無数にあるし、仮に全てを覚えていたとしても、やはり出来事を取捨選択して因果関係を組み立てる段階で必然的に恣意が混ざってしまう。それに、組み立てた因果関係が正しいかどうかも、実際には何の保証もない。

物語として考えるなら、この話はよくできたと自分でも思う。「選択肢があると知っていないとそもそも選べない」というくだりなんか特に、書いていて自分で感動するくらいだった。そして、全ての要因がきれいに因果関係の網で繋がって、ロシア語を始めるという選択に私を「追い込んだ」。

でも、この記事は、あくまでも「現在の私が過去を振り返ったときに、出来事を説明するためにそれっぽい物語を作ってみた結果生まれたもの」だから、真実の全てを記してはいないかもしれない。

歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の終わりのない対話である。
エドワード・ハレット・カー「歴史とは何か」

実は歴史哲学全然分かってないからそろそろ勉強し直さないと史学徒を志す人間としてかなりヤバいんですよね